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相続

60代から始める相続の完全ガイド|遺言・家族信託・相続放棄

ヨバナシ編集部 読了 約11分

親の介護期から夫の死別までを視野に入れた、50〜60代女性のための相続総合ガイド。元気なうちの3ステップ準備、遺言書、家族信託、寄与分、配偶者居住権、実家不動産の分け方、親の借金と相続放棄、葬儀費用、遺品整理を場面別に整理しました。

「親が亡くなって、初めて相続の制度を調べた」「夫の急死で、遺言書も預金口座の場所も分からなかった」。50〜60代女性の相続トラブルは、ほぼ例外なく準備の遅れから生まれます。

国税庁の統計では、相続税の課税対象となる相続は年間約13万件ですが、税の問題よりも、遺産分割でもめる割合のほうが圧倒的に多いのが現実です。揉めるケースの大半は、遺産総額1,000万円以下の「普通の家」で起きています

この記事は、ヨバナシのCluster D(相続)の総合ガイドです。親が元気なうちから、配偶者の死別後までを1枚の地図に並べ、それぞれの場面で動ける線を引きます。

この記事で扱う8つの場面

整える机の上

  1. 親が元気なうちにやる3ステップ(遺言・家族信託・預金調査)
  2. 遺言書の3種類と書き方
  3. 家族信託で認知症対策
  4. 寄与分(介護した人の取り分)
  5. 配偶者居住権(夫の死後に妻が住み続ける権利)
  6. 実家不動産を兄弟でどう分けるか
  7. 親の借金と相続放棄(3ヶ月の壁)
  8. 葬儀費用と遺品整理の相場

それぞれで、現状の正体・使える制度・判断のコツを順に置いていきます。

場面1. 親が元気なうちにやる3ステップ

朝の窓辺

相続準備のいちばん大きな分岐点は、親が認知症になる前か、なってからかです。認知症と診断されると、遺言・家族信託・預金引出し・不動産売却のすべてが事実上ストップします。

親が元気なうちの3ステップ

  1. 預金調査:親の金融機関の口座を一覧化(通帳・カード・ネット銀行・有価証券)
  2. 遺言書作成:自筆証書 or 公正証書(揉めない形式)
  3. 家族信託:認知症後も資産を動かせる仕組みを作る

詳しい手順は 親がまだ元気なうちに。60代で始める『もめない相続』3ステップ にまとめました。

「縁起でもない」と言っていた夫が遺言を書いてくれた日のコラムは 『遺言書なんて縁起でもない』と言っていた夫が、書いてくれた日 で。

場面2. 遺言書の3種類と書き方

書類を整える机の上

遺言書には主に3種類あります。60代以上は公正証書遺言が現実的に最も安全です。

3種類の比較

種類費用偽造リスク検認向くケース
自筆証書遺言ほぼ0円内容シンプル、財産少額
公正証書遺言5〜15万円ほぼなし不要揉める可能性、財産が多い
秘密証書遺言1.1万円内容を秘密にしたい

自筆証書遺言の改正点(2020年以降)

  • 法務局で自筆証書遺言を保管できる制度(手数料3,900円/件)
  • 保管された遺言は検認手続き不要
  • 添付の財産目録はパソコン作成可

遺言書に必ず書く5項目

  1. 不動産の表示(登記簿どおり)
  2. 預貯金の銀行・支店・口座番号
  3. 各財産を誰に相続させるか
  4. 遺言執行者の指定
  5. 自筆署名・日付・押印(公正証書以外)

場面3. 家族信託で認知症対策

穏やかな午後

家族信託は、親(委託者)が子(受託者)に財産の管理を任せる契約です。認知症で親の判断能力が下がっても、子が代わりに不動産売却や預金引出しを続けられます。

家族信託でできる主なこと

  • 親の自宅不動産を、親の生活費・施設費のために売却
  • 親の預金を、子が代わりに引き出して施設費に充当
  • 親の死後、信託契約に基づき子へ承継(遺言代わりに使える)

費用の相場

  • 信託契約の作成(司法書士・弁護士):30〜80万円
  • 不動産がある場合の登記費用:数万円
  • 公正証書化:5〜10万円
  • 総額50〜100万円が目安

成年後見制度と比べて、家族信託は家庭裁判所の関与なしで柔軟に運用できる点が利点です。

場面4. 寄与分(介護した人の取り分)

書類を整える

「私は何年も親の介護をした。何もしなかった兄弟と、相続が同じなのは納得できない」。これは50〜60代女性の相続相談で最も多いテーマです。

民法上、寄与分は「特別の寄与」をした相続人に追加で財産を与える制度。ただし、認められるハードルは想像以上に高いです。

寄与分が認められる4条件

  1. 無償性:報酬を受け取っていないこと
  2. 継続性:3年以上が目安
  3. 専従性:仕事を辞めるなど、本格的に従事していたこと
  4. 特別性:通常の親族扶助の範囲を超えていたこと

寄与分が認められなかった有名な判例

「13年間介護した嫁の寄与分がゼロ」になった判例があります。嫁は法定相続人ではないため、特別寄与料の制度(2019年新設)を別途請求する必要があります。

詳しい条件と「証拠を残す方法」は 13年介護した嫁の寄与分が『ゼロ』になった判例。認められる条件と証拠の残し方 を参照。

場面5. 配偶者居住権

並ぶ二人の椅子

2020年4月から始まった制度で、夫の死後、妻が自宅に住み続けられる権利を法的に保護します。子がいる家庭で「家は子に相続させたいが、妻は住み続けたい」場合に有効。

配偶者居住権の3つの落とし穴

  1. 他人に貸せない:家賃収入が必要なときに使えない
  2. 売却に妻の同意が必要:相続人だけでは家を売れない
  3. 配偶者居住権の評価額で相続税が変わる

詳しくは 配偶者居住権、知らずに使うと『家を売れない』。60代妻が知っておく3つの落とし穴 にまとめました。

場面6. 実家不動産を兄弟でどう分けるか

整える書類

実家の相続は、現金で分けられない不動産が1つという構造的な問題があります。3人兄弟で揉めるパターンの典型は「1人が売りたくない、2人が売りたい」です。

揉めない4つの分け方

  1. 現物分割:1人が家を取り、他は現金や他の財産で代償
  2. 代償分割:1人が家を取り、他に現金を支払う(要・余力)
  3. 換価分割:家を売って、現金を分ける(最も揉めにくい)
  4. 共有分割:兄弟で共有名義(最も後でモメる、原則避ける)

「先に売る」節税

相続発生から3年10ヶ月以内に売却すると、取得費加算の特例で譲渡所得税が下がります。空き家になる実家は、放置せず計画的に売却するのが現実的。

詳しい分け方の比較は 実家を兄弟で相続、3人中1人が売りたくない…揉めない4つの分け方と『先に売る』節税の使い方 で。

場面7. 親の借金と相続放棄

ひとりの朝

親の死後、消費者金融・カードローン・連帯保証人の債務が見つかることがあります。プラスの財産より借金が多い場合、相続放棄が必須です。

相続放棄の3ヶ月の壁

  • 親の死亡を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述
  • 期間を過ぎると単純承認とみなされ、借金も相続することに
  • 相続財産を1円でも使うと放棄できなくなる(自動車を売却・預金で葬儀代払い等)

兄弟にも連絡すべき理由

第1順位(子)が放棄すると、第2順位(親)→第3順位(兄弟姉妹)へ債務が移ります。兄弟にも放棄を勧める連絡が必要になります。

詳しい手続きと費用は 親の借金、知ったその日から3ヶ月。相続放棄で兄弟にも『連絡すべき』理由 を参照。

場面8. 葬儀費用と遺品整理の相場

朝の余白

葬儀費用の現実

  • 一般葬:平均161.3万円
  • 家族葬:平均105.7万円
  • 一日葬:平均87.5万円
  • 直葬:平均42.8万円

形式によって4倍の差があります。突然の死別で動揺している間に決めると後悔しやすいので、元気なうちに親と希望を確認しておくのが現実的。

詳しくは 葬儀の費用、平均161万から42万まで。家族葬・直葬・一般葬の選び方と『安くする』5つのコツ で。

遺品整理の費用

  • 1K:3〜8万円
  • 1LDK:6〜20万円
  • 2LDK:12〜35万円
  • 3LDK:17〜50万円
  • 4LDK:22〜70万円

詳しい業者選びと契約時に確認すべき条項は 遺品整理を業者に頼むといくら?一軒家3LDKで17〜50万、4LDKで22〜70万の相場と業者選び で。

8つの場面に共通する3つの原則

朝の光

原則1. 「準備は元気なうちに、書面で残す」

口約束・暗黙の合意は、相続発生時にほぼ全て吹き飛びます。遺言書・家族信託契約書・預金一覧・葬儀の希望は、全て書面で残しておきます。

原則2. 揉める前に専門家に相談する

法テラスは無料相談3回まで(収入要件あり)。相続税が絡む場合は税理士、不動産があるなら司法書士、揉めるリスクがあるなら弁護士、というのが標準的な使い分けです。

原則3. 相続は「家族で揉める作業」と覚悟する

「うちは仲がいいから揉めない」は、相続が発生した瞬間に幻想と分かります。仲の良い家庭ほど準備が薄く、揉めたときの心理的ダメージが大きい。揉める前提で書面を整えるのが現実的な構えです。

よくある質問

Q. 親が元気なうちにやっておくべき相続準備は何ですか?

3ステップで進めます。①預金調査:親の金融機関の口座を一覧化(通帳・カード・ネット銀行・有価証券)、②遺言書作成:60代以上は公正証書遺言(5〜15万円)が最も安全、③家族信託:認知症後も資産を動かせる仕組みを作る(総額50〜100万円)。認知症と診断されると遺言・家族信託・預金引出し・不動産売却がすべて事実上ストップします。

Q. 公正証書遺言と自筆証書遺言、どちらを選ぶべきですか?

60代以上は公正証書遺言が現実的に最も安全です。費用5〜15万円、偽造リスクほぼゼロ、検認不要。揉める可能性がある・財産が多い場合に向きます。自筆証書遺言は費用ほぼゼロですが偽造リスクが高く検認が必要。ただし2020年から法務局で保管できる制度(手数料3,900円)が始まり、保管されたものは検認不要です。

Q. 親の借金が見つかりました。相続放棄はどう進めますか?

親の死亡を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述します。期間を過ぎると単純承認とみなされ借金も相続することになります。相続財産を1円でも使うと放棄できなくなる点に注意(自動車を売却・預金で葬儀代払い等)。第1順位(子)が放棄すると第2順位(親)→第3順位(兄弟姉妹)へ債務が移るため、兄弟にも放棄を勧める連絡が必要です。

Q. 実家を兄弟で相続する時に揉めない分け方はありますか?

4つの分け方があります。①現物分割(1人が家を取り他は現金や他の財産で代償)、②代償分割(1人が家を取り他に現金を支払う、要余力)、③換価分割(家を売って現金を分ける、最も揉めにくい)、④共有分割(兄弟で共有名義、最も後でモメるので原則避ける)。相続発生から3年10ヶ月以内に売却すると取得費加算の特例で譲渡所得税が下がります。

Q. 13年間介護した嫁の寄与分がゼロになった判例があると聞きました。本当ですか?

本当です。嫁は法定相続人ではないため寄与分は認められませんでした。2019年に新設された「特別寄与料」の制度で別途請求が可能になっています。寄与分が認められる4条件は、無償性(報酬を受け取っていない)、継続性(3年以上が目安)、専従性(仕事を辞めるなど本格的に従事)、特別性(通常の親族扶助の範囲を超えた)。証拠として介護日誌・領収書・通院記録の保存が必須です。

相談できる窓口

  • 法テラス(無料相談3回まで/要収入要件)
  • 日本司法書士会連合会(家族信託・登記)
  • 税理士会の無料相談(地域ごとに開催)
  • 公証役場(公正証書遺言)
  • 市区町村の高齢者支援窓口
  • ヨバナシ「みんなの夜話」(匿名で打ち明けられる場所

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相続は、悲しみと事務作業が同時にやってくる、人生でいちばん消耗する作業です。だからこそ、元気なうちに地図を作っておく価値が大きい。今夜、自分のメモに「親の口座が分かるリストを作る日」と「公正証書遺言の費用を調べる日」だけでも書き込んでおいてください。

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#60代 #相続放棄 #喪失