ヨバナシ —女たちの秘密会議
コラム

= COLUMN =

母の遺言、開封の日に、姉妹で選んだこと

ヨバナシ編集部 読了 約6分

90歳の母が亡くなって、母が遺した、公正証書遺言を、開封する日。65歳のわたしと、63歳の妹、2人で、母の遺言と、向き合いました。母の遺言の内容、姉妹で選んだこと、母が遺言に込めた本当の気持ちを、ゆっくり、お伝えします。同じく親の遺言と向き合う方へ。

65歳のわたしの、母が、先日、90歳で、亡くなりました。

別記事(相続トラブルを未然に防ぐ、家族会議の3つのルール)に書いた、年に1回の家族会議を、わたしと、妹と、母の3人で、続けてきた、あの母です。

母は、生前、ちゃんと、公正証書遺言を、遺して、くれていました。

母が亡くなって、四十九日が、過ぎた、ある日。

わたしと、妹(63歳)は、母の遺言を、ちゃんと、確認するために、母の家に、集まりました。

公正証書遺言なので、家庭裁判所での、検認は、不要。 ですが、わたしと妹は、母の、遺言の内容を、ふたりで、ちゃんと、向き合って、確認したかったのです。

今日は、その、母の遺言と、向き合った日のことを、お伝えします。

「親の遺言と、どう、向き合えばいいか」「姉妹で、相続を、どう、進めればいいか」と、感じている方に、ひとつの参考に、なれば、と思います。

なお、遺言や、相続の手続きは、ご家庭ごとに、本当に違います。具体的なご相談は、必ず、弁護士、司法書士、税理士などの、専門家に、ご相談ください。

母の遺言と、向き合う日

母の家の、リビング。

母が、いつも、座って、いた、椅子。 母が、大事にして、いた、お茶のセット。

それらが、まだ、そのまま、残っている、リビングで、わたしと妹は、母の、公正証書遺言の、コピーを、テーブルに、置きました。

妹が、ぽつりと、言いました。

「お母さん、本当に、ちゃんと、遺言、遺してくれてたんだね」

わたしは、頷いて、こう、返しました。

「うん。家族会議で、毎年、話してきたこと、ぜんぶ、ちゃんと、遺言に、してくれてた」

そして、わたしと妹は、母の、遺言を、ゆっくり、読み始めました。

母の遺言の、内容

母の、公正証書遺言の、内容は、こうでした。

財産の、内訳

  • 母の家(土地・建物): 評価額2,000万円
  • 預貯金: 1,200万円
  • 母の保険(死亡保険金): 300万円
  • 合計: 3,500万円

母の、遺言での、分け方

母は、遺言で、こう、書いて、いました。

  • 母の家(土地・建物): 妹に
  • 預貯金1,200万円: わたしに
  • 死亡保険金300万円: わたしと妹で、150万円ずつ

母が、遺言に、書いた、付言事項

公正証書遺言には、財産の分け方の、ほかに、「付言事項」という、母の、気持ちを、書いた部分が、ありました。

母の、付言事項を、わたしと妹は、いっしょに、読みました。

「わたしの、大切な、ふたりの娘へ。

この家を、妹の、由美に、遺すのは、由美が、わたしの、最後の3年、いちばん、近くで、わたしの面倒を、見てくれたから。 由美は、わたしの家から、車で10分のところに、住んで、毎日のように、わたしの様子を、見に来てくれました。

預貯金を、姉の、由紀子に、多く遺すのは、由紀子が、自分の、お姑さんの介護も、しながら、わたしのことも、月に1回、ちゃんと、訪ねてくれたから。 由紀子の、これからの、お姑さんの介護や、自分の老後に、役立ててほしい。

ふたりとも、それぞれの、暮らしの中で、わたしを、大切に、してくれました。 わたしは、本当に、しあわせな、母でした。

どうか、ふたり、これからも、仲良く、助け合って、生きていってください。 それが、わたしの、いちばんの、願いです。

母より」

母の、付言事項を、読み終わって、わたしと妹は、母の家のリビングで、ふたりで、しばらく、泣いて、いました。

姉妹で、選んだこと

母の遺言を、読んで、わたしと妹は、ふたりで、ゆっくり、話し合いました。

そして、3つのことを、選びました。

選んだこと① 母の遺言を、そのまま、尊重する

母の、遺言の、分け方を、わたしと妹は、そのまま、尊重することに、しました。

妹は、最初、こう、言いました。

「お姉ちゃん、家の評価額のほうが、預貯金より、多いよ。お姉ちゃんの分が、少ないんじゃない?わたし、預貯金、ちょっと、分けようか?」

ですが、わたしは、こう、答えました。

「ううん、いいの。お母さんが、由美の、毎日のお世話を、いちばん、評価してくれた、その遺言を、そのまま、尊重したい」

「それに、わたしには、お母さんが、預貯金を、多めに、遺してくれた。これからの、お姑さんの介護に、使わせてもらう」

母の、気持ちが、こもった、遺言。 それを、姉妹で、そのまま、尊重する。

これが、わたしと妹の、いちばんの、選択でした。

選んだこと② 母の家を、すぐには、売らない

妹が、相続する、母の家。

妹は、こう、言いました。

「この家、すぐには、売らない。あと、しばらく、お母さんの、思い出の家として、残しておきたい」

わたしも、賛成でした。

母の、思い出が、詰まった家。 すぐに、売って、お金に、するのは、ふたりとも、まだ、できなかった。

「お母さんの、一周忌、三回忌は、この家で、やろう」

わたしと妹は、そう、決めました。

選んだこと③ 母の付言事項を、額に入れて、飾る

母が、遺言に、書いてくれた、付言事項。

「ふたり、仲良く、助け合って、生きていってください」

この、母の、いちばんの、願いを、わたしと妹は、コピーして、それぞれの家に、額に入れて、飾ることに、しました。

「お母さんの、最後の言葉。いつも、見えるところに、飾っておきたい」

妹の、言葉でした。

母の遺言が、姉妹に、遺してくれたもの

母の遺言と、向き合って、わたしが、深く、感じたことを、お伝えします。

母の遺言は、お金より、「気持ち」を、遺してくれた

母の遺言で、いちばん、大事だったのは、財産の分け方、では、ありませんでした。

母の、付言事項。 「ふたりとも、わたしを、大切にしてくれた」「これからも、仲良く、助け合って」

母の、この、気持ちが、わたしと妹に、いちばんの、宝物を、遺してくれました。

お金は、いつか、なくなる。 ですが、母の、この気持ちは、わたしと妹の、心の中に、ずっと、残ります。

家族会議が、トラブルを、防いでくれた

母が、生前、わたしと妹と、年に1回、家族会議を、続けてくれた。

そのおかげで、母の、財産の状況も、母の、希望も、わたしと妹は、ぜんぶ、ぼんやり、知って、いました。

だから、母が、亡くなったあと、遺言の内容に、わたしと妹は、何の、驚きも、なく、すんなり、受け入れることが、できました。

「家族会議が、なかったら、もしかしたら、遺言の内容で、ちょっと、揉めたかもしれない」

そう、わたしは、思います。

母が、元気なうちに、家族で、ちゃんと、話し合っていたこと。 それが、母の、いちばんの、贈り物でした。

同じ立場の方へ

もし、いま、親の、相続や、遺言と、向き合おうとしている方が、いらっしゃるなら、申し上げたいことが、2つ、あります。

ひとつめ: 親が、元気なうちに、家族で、話し合う

親が、元気なうちに、家族で、ちゃんと、相続のことを、話し合う。

これが、相続トラブルを、防ぐ、いちばんの、コツです。

わたしと妹の場合、母との、年に1回の家族会議が、ぜんぶを、円滑に、してくれました。

ふたつめ: 親の、付言事項(気持ち)を、いちばん、大事にする

遺言の、財産の分け方より、親の、付言事項(気持ち)を、いちばん、大事にしてください。

親が、なぜ、そう、分けたのか。 その、気持ちが、わかれば、姉妹で、揉めることは、ぐっと、減ります。

母の、付言事項が、わたしと妹を、いちばん、深いところで、結びつけて、くれました。

さいごに

母の遺言と、向き合った、その日。

わたしと妹は、母の、財産だけでなく、母の、いちばんの、気持ちを、受け取りました。

「ふたり、仲良く、助け合って、生きていってください」

母の、いちばんの、願いを、わたしと妹は、これから、ちゃんと、守って、いきます。

母が、遺してくれた、いちばんの、宝物。 それは、お金ではなく、姉妹の、絆、でした。

母、ありがとう。 これからも、由美と、ふたり、仲良く、生きていきます。

なお、遺言や、相続の手続きは、ご家庭ごとに違います。具体的なご相談は、必ず、弁護士、司法書士、税理士などの、専門家に、ご相談ください。

= 関連する夜話 =

相続

60代の終活、わたしが始めたエンディングノート

65歳のわたしが、終活の第一歩として、エンディングノートを、書き始めました。何を書くのか、どこで手に入れるのか、遺言書との違い、書いてみて気づいたこと。終活を、難しく考えず、自分と家族のために始める方法を、公的な情報と一緒に、お伝えします。終活を考える方へ。

#60代 #終活 #エンディングノート

相続

実家を売って3年、姉妹で決めた『お母さん記念日』のこと

母が亡くなったあと、姉妹で実家を売却して、3年が経ちました。実家がなくなった寂しさを、わたしと妹で、ある方法で埋めています。それは、年に1回、ふたりで集まる『お母さん記念日』を、作ったこと。実家の代わりに、姉妹で築いた、新しい家族の場所の話を、お伝えします。

#60代 #実家 #姉妹

相続

実家を売ると決めた夏、姉妹で1日かけて話したこと

母が亡くなって2年。空き家になった実家を売るか残すか、わたしと妹で決めなければなりませんでした。築55年の家、3,000枚の家族写真、母の遺品、わたしと妹の思い出。ある夏の1日、わたしたちは実家のリビングで朝から夕方まで話し合い、ひとつの結論にたどり着きました。姉妹で決めた『売る』までの記録です。

#60代 #実家 #売却