相続
『遺言書なんて縁起でもない』と言っていた夫が、書いてくれた日
書いてくれるまで15年。夫をその気にさせた『きっかけ』と、公正証書遺言を作るまでの具体的な手順を体験からお話しします。
「縁起でもない。まだ早い」
遺言書の話をするたびに、夫はこう言って話を打ち切ってきました。60代に入り、70代が見えてきても、変わらず。15年、私はあきらめていました。
きっかけは、夫の同級生の葬儀
ある日、夫の古い友人が亡くなりました。急な病で、遺言を残す時間はなかったそうです。
葬儀から帰った夫が、ぽつりと言いました。
「あいつのとこ、息子さんと娘さんで揉めてるらしい」
その夜、夫のほうから「……書いとくか」と言ってきたのです。15年、私からは何十回と持ちかけた話が、同級生の死でようやく動きました。
自筆か、公正証書か
自筆証書遺言
自分で書けば、費用はゼロ。でも、形式の不備で無効になるケースが少なくありません。最近は法務局で保管してくれる制度もできました。
公正証書遺言
公証役場で、公証人に作ってもらう方法。費用はかかります(財産額によりますが、数万円〜十数万円が目安)が、無効になりにくく、家庭裁判所の検認も不要です。
私たちは、迷わず公正証書を選びました。夫の友人ご一家のことが、頭を離れなかったから。
公証役場へ行くまでの準備
用意した書類
- 戸籍謄本(夫、私、子どもたち)
- 住民票
- 不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書
- 預金通帳の写し
- 証人2名の身元がわかるもの(私たちは司法書士さんに依頼)
決めておいたこと
- 何を、誰に、どれだけ残すか
- 祭祀主宰者(お墓を誰が継ぐか)
- 遺言執行者を誰にするか
この三つを、夫婦で一ヶ月ほど話し合いました。
当日、公証役場にて
公証人の先生は、とても優しい方でした。夫の話を一つ一つ確認しながら、法律に合う言葉に直してくれます。
「ご夫婦でここまで話し合って来られる方は、意外と少ないんですよ」
と言われて、私は誇らしかった。15年かかりましたけどね、と笑いました。
書いてみて、何が変わったか
夫の表情が、少し柔らかくなりました。「いつ何があっても、もう大丈夫」と言って、最近はよく夫婦で旅行の計画を立てています。
遺言書は、死の準備ではなく、残される人への手紙です。
秘密会議のみなさんへ
- パートナーが嫌がるのは、当たりまえ。 急がず、きっかけを待つのも選択。
- 公正証書は、多少費用がかかっても安心。 揉めた後のコストに比べれば、わずかです。
- 子どもたちに、書いたことは伝えておく。 保管場所だけでも共有を。
- まずは、最寄りの公証役場に電話してみる。 相談は無料です。
この体験談は、あくまで私たちの事例です。財産の内容やご家族の事情によって適切な形は変わります。必ず、司法書士・弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。
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