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相続

親が元気なうちに始める『もめない相続』3ステップ

ヨバナシ編集部 読了 約6分

親が認知症になると、預金の引き出しも家の処分もできなくなります。元気なうちに進めたい『公正証書遺言』『家族信託』『預金の把握』の3つを、切り出し方から費用相場まで解説。60代娘が親とどう話し合ったかの実例もまとめました。

親が認知症になったあと、家族を苦しめるのは介護だけではありません。

「親の預金が引き出せない」「実家を売ろうとしても親の判断能力がないから契約できない」「遺言がないから兄弟で揉める」。。

認知症になる前にしかできない準備が3つあります。この記事では、60代娘が親(80代・健在)と始めた「公正証書遺言・家族信託・預金把握」の実例と、それぞれの費用・切り出し方・専門家選びを解説します。

全体像から把握したい方へ:この記事は「相続」シリーズの一部です。元気なうちの3ステップ準備、遺言・家族信託、寄与分、相続放棄、葬儀・遺品整理までを8場面で整理した 60代から始める相続の完全ガイド もあわせてどうぞ。

なぜ「元気なうちに」なのか

認知症が進むと、法律行為ができなくなる

預金の引き出し、不動産の売却、契約書へのサイン、これらはすべて「意思能力」が必要な法律行為です。

認知症と診断され、意思能力がないとされれば、銀行口座は凍結、不動産は売れなくなり、遺言も書けなくなる。

日本認知症予防学会の推計では、65歳以上の5人に1人が認知症になると予測されています。他人事ではありません。

成年後見制度はあるが、使い勝手が悪い

認知症になった後は成年後見制度を使うしかなくなりますが:

  • 申立て費用:10〜20万円
  • 家庭裁判所が後見人(弁護士・司法書士)を選ぶので家族が希望した後見人になれないことが多い
  • 後見人への報酬が毎月2〜6万円発生
  • 本人の資産を自由に動かせない(引き出し・投資・不動産売却はすべて裁判所の承認が必要)

ということで、認知症発症後に動くと、手遅れ感が強いのが現実です。

ステップ1:公正証書遺言(費用5〜20万円)

書類を整えるイメージ

公正証書遺言とは

公証人が作る、法的に最強の遺言。自筆遺言と違い、形式不備で無効になる可能性がほぼゼロ、家庭裁判所での検認も不要です。

費用

  • 公証人手数料:財産額による(例:5,000万円の遺産なら約5〜6万円)
  • 証人2名の手配(司法書士事務所に頼むと1〜3万円)
  • 司法書士・弁護士に原案作成を頼む場合:5〜15万円

総額の目安:10〜20万円。一度きりの費用です。

親への切り出し方

直接「遺言書いて」は、ほぼ拒否されます。きっかけを挟んで話す。

「最近、知り合いのお母さんが亡くなって、遺言がなくて兄弟で揉めてるんだって。私たち兄弟が揉めないように、お父さんお母さん、書いておいてもらえると安心なんだけど…」

「私たちが困る」というフレーズが効きます。親は「子のため」なら動きやすい。

具体的に書くこと

  • 誰に何を残すか(不動産、預金、有価証券)
  • 祭祀主宰者(お墓を誰が継ぐか)
  • 遺言執行者(遺言の内容を実行する人、家族でもOK)
  • 付言事項(家族への気持ちを文章で)

公証役場の探し方

最寄りの日本公証人連合会:公証役場一覧で検索。予約制で、初回相談は無料です。

ステップ2:家族信託(費用30〜100万円)

家族信託とは

親(委託者)が、信頼する家族(受託者、例えば娘)に財産の管理・処分を任せる契約。親が認知症になっても、受託者が預金を引き出し、実家を売ることができます。

どんな時に使うか

  • 実家を将来売却して介護費用に充てたい
  • 親の預金で介護サービスを支払いたい
  • 相続時に兄弟で揉めないよう、運用方法を今決めておきたい

費用

  • 司法書士・弁護士への依頼料:30〜50万円
  • 登記費用(不動産を信託する場合):10〜30万円
  • 公正証書作成費用:5〜10万円

総額:30〜100万円。遺言より高額ですが、生前から財産を動かせるのが強みです。

家族信託の注意点

  • 受託者(娘など)が管理責任を負うため、信頼関係が必須
  • 兄弟間で受託者を誰にするかで揉めるリスク
  • 税務上の扱いが複雑(税理士の併用が賢明)

遺言と家族信託、どちらを選ぶか

公正証書遺言家族信託
目的死亡時の財産分配生前の財産管理
費用10〜20万円30〜100万円
認知症後遺言は有効契約済みなら有効
柔軟性書き直し可契約変更は複雑

両方併用が理想ですが、まず遺言から進めるのが現実的です。

ステップ3:親の預金・財産を把握する

「どこに・いくら・あるのか」を家族で共有

親が認知症になってから、「どこの銀行に預金があるか分からない」と嘆くご家族は非常に多いです。

把握すべき5項目

  1. 銀行口座(どの銀行の、どの支店)
  2. 証券口座・投資信託
  3. 保険(生命保険・医療保険の契約先)
  4. 不動産の権利証や登記簿
  5. 借金・ローン・保証債務

親にどう聞き出すか

「整理してあげる」アプローチが効きます。

「最近、通帳がどこにあるか分からなくなる、って友達が話してて。お母さんの通帳、私と一緒にノートに書いて、整理しておかない? お母さんがすぐ使えるように」

“親の利便性”のためとして提案します。

財産管理ノート

ノート(または専用「エンディングノート」)に:

  • 銀行名・支店名・口座番号
  • キャッシュカードの保管場所(暗証番号は書かない)
  • 証券会社名
  • 加入している保険の証券番号
  • 不動産の登記情報

暗証番号・実印は書かない。万が一ノートを紛失しても大事にならないように。

コピー・写真を取っておく

通帳・保険証券・登記簿などは写真を撮ってクラウドに保存。紙のノート1冊だけだと、紛失・火災で困ります。

60代娘・里子さん(仮名)の3ヶ月プラン

里子さん(62歳)は、父(85歳)・母(82歳)と両親が健在で、実家は父名義。姉と弟の3人きょうだい。

第1ヶ月:家族会議

  • 父母と里子さん・姉・弟で家族会議
  • 議題:遺言、実家の扱い、介護費用の出どころ
  • 紙に書いたリストを配ってから話し合い(感情論を避けるため)

第2ヶ月:遺言作成

  • 司法書士事務所に父母同席で相談
  • 公正証書遺言を父母それぞれ作成(2人分で合計30万円)
  • 付言事項で「3人の子に平等に、母を大切に」を記載

第3ヶ月:預金整理と家族信託

  • エンディングノートに父母の全財産を記入
  • 実家を将来売却できるよう、家族信託契約を父と里子さんで締結(受託者=里子さん、50万円)
  • 姉と弟にも契約書のコピーを共有して透明性確保

「父も母も、『これでいつ倒れても安心』と笑った。3ヶ月で100万かからなかった。家族会議から始めたのが正解だった」

専門家の選び方

司法書士

  • 遺言・家族信託・相続登記のワンストップ相談ができる
  • 費用が弁護士より安い(30%前後)
  • 日本司法書士会連合会で地域検索

弁護士

  • 揉める可能性がある家族には弁護士が安心
  • 費用は司法書士より高め
  • 弁護士会の初回無料相談で相談先を選ぶ

税理士

  • 相続税が発生しそうな規模(遺産3,000万超)では必須
  • 相続専門の税理士を選ぶ

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相談できる窓口

  • 最寄りの公証役場:公正証書遺言の事前相談(無料)
  • 司法書士・弁護士の無料相談:各地の司法書士会・弁護士会
  • 法テラス:収入条件を満たせば無料相談
  • 市区町村の「成年後見センター」:親が認知症になった場合の備え

秘密会議のみなさんへ

  • 認知症になると、預金凍結・不動産売却不可・遺言不可
  • 公正証書遺言(10〜20万)+ 家族信託(30〜100万) が両輪
  • 親への切り出し方は「私たちが困る」を主語に
  • 財産整理ノートを一緒に作る、これだけでも十分意味がある
  • 3ヶ月・100万円以内で、主要な準備は完了できる

「こんな話、親に切り出しにくい」。そう感じているご家族ほど、実は親のほうが”書いておいた方が安心”と思っているケースが多いもの。今度の週末、聞いてみませんか。


※本記事は一般的な制度解説です。個別のご事情・税制の詳細については、弁護士・司法書士・税理士など相続専門の専門家にご相談ください。

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#60代 #相続放棄 #喪失