介護離職で女性の年収は約半分に。辞める前に使う5つの制度
介護のために仕事を辞めた女性の約5割が、年収が大きく減ったと答えています。精神面・身体面の負担も増すというデータも。辞める判断の前に知っておきたい介護休業給付金・介護休暇・時短勤務など、50代女性のための公的制度と在宅勤務での両立法をまとめました。
「あと3年、このペースは無理かもしれない」
親の介護を続けながら働く50代女性が、いちばん陥りやすい判断が介護離職です。「辞めればラクになる」と思って退職を決意。
ですが、辞めたあとの生活は、想像していたより重いものになる、というデータがあります。
三菱UFJ銀行 Money Canvasの調査では、介護離職した女性の約5割が「年収が大きく減った」と回答しています。精神面・身体面の負担が増した人は5割超、経済面の負担増を訴えた人は約7割。さらに、再就職を希望して実際に戻れた人は4割しかいません。
数字だけ見ると残酷ですが、この記事を書きながら何度も感じたのは、辞める判断は多くの場合「他に道がないと思い込んでいる」状態で下されているということです。実際には、辞めずに続ける道が、たいていの場合は残されています。
辞める前に使える制度が、意外なほどたくさんあります。この記事では、介護離職で後悔しないための5つの公的制度と、在宅勤務で乗り切った人の実例をまとめます。
全体像から把握したい方へ:この記事は「親の介護」シリーズの一部です。離職を避ける制度・きょうだいでの分担・認知症対策・施設選びまでを9場面で整理した 親の介護に直面した50代娘の完全ガイド もあわせてどうぞ。
介護離職が「楽になる」と限らない理由
収入が、想像以上に減る
50代女性が正社員で平均年収400万円だったとします。介護離職後、パート勤務で復帰した場合、時給1,100円 × 週4日 × 1日5時間=月額約8.8万円=年収105万円。約4分の1に減る計算です。これで介護費用+自分の生活費をまかなえる人は、多くありません。
時間ができても、ラクにはならない
「自分の時間ができるから大丈夫」と思っていたのに、24時間介護モードになって逆に疲弊するのが介護離職のリアルです。仕事は「強制的に親と離れる時間」でもあって、それを失う影響は本人が思うより大きい、というのが介護経験者から繰り返し聞く話です。
再就職が想定以上に難しい
50代後半〜60代で一度離れた仕事に戻るのは、現実には厳しいものです。「3年経ったら再就職」と思って辞めても、4割しか戻れません(同上 三菱UFJ銀行調査)。
辞める前に使える5つの制度
① 介護休業(最大93日・3回まで分割可)
育児・介護休業法で、対象家族1人につき通算93日、3回まで分割して休める制度です。
- 対象:要介護2以上相当の親族(配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫)
- 雇用形態:正社員・契約社員・パートも対象(一定条件あり)
- 申請:開始予定日の2週間前までに書面で申請
93日を「今3週間、落ち着いたらまた3週間」と分けて使えるのがポイントです。施設入所の申請から入居までの3ヶ月、在宅介護の立ち上げ期、など、一番大変な時期だけ集中的に使うのが賢い運用です。
② 介護休業給付金(休業前賃金の67%)
介護休業中、雇用保険から休業開始時賃金日額の67%が給付されます(厚労省:介護休業給付について)。
月給30万円の人なら、月額約20万円が支給される計算です。働きながら受け取る給料ほどではないにしても、辞めた場合の収入減に比べれば段違いに違います。
給付金の申請はハローワーク経由で、会社が代行してくれるのが通常です。
③ 介護休暇(年5日・半日単位可)
介護休業とは別の制度で、年5日(対象家族が2人以上なら年10日)の介護休暇が取得できます。
- 時間単位・半日単位での取得も可能(2021年から)
- 通院の付き添い、ケアマネとの打ち合わせ、手続きに便利
- 欠勤扱いにならない
「月1回、通院に半日」を計画的に使えば、仕事を続けながら現場に関われます。
④ 時短勤務・フレックスタイム
介護のために時短勤務(1日6時間など)やフレックスタイムを選べる制度が、育児・介護休業法で定められています。
- 時短勤務:3年以上の利用が可能(2回以上の利用も可)
- フレックス:会社に制度があれば利用可
- 所定外労働の免除・深夜業の制限も請求可能
「残業・夜勤・出張を減らす」だけで介護は相当ラクになります。上司に切り出す際は「介護休業までは使わないが、定時で帰らせてほしい」と伝えるのが、現場のリアリティに合っています。
⑤ 在宅勤務・リモートワーク
コロナ禍を経て、在宅勤務を制度化する会社が大幅に増えました。
人事に「週◯日の在宅勤務を希望」と交渉してください。通勤時間がなくなるだけで、介護への関与時間が1日2時間増える計算になります。
在宅しながら午後にデイサービス送迎・訪問介護の立ち会い、というスタイルを実現している50代女性は、この数年で確実に増えました。
50代女性・順子さん(仮名)の3ヶ月プラン
順子さん(55歳)は、認知症の母の介護を在宅でしながら、会社員を続けています。3年前に倒れそうになったときに使った組み合わせが、これです。
| 期間 | 使った制度 | 状況 |
|---|---|---|
| 最初の3週間 | 介護休業(33日) | 要介護認定の申請、ケアマネ選定、サービス導入 |
| 次の2ヶ月 | 時短勤務(1日6時間) | デイサービスで母を預けながら仕事復帰 |
| そのあと継続 | 在宅勤務週2日+介護休暇月1回 | 通院付き添い・ケアマネ面談に対応 |
「介護休業給付金を入れたら、休業中も月20万入ってきた。93日を一気に使わず、一番大変な3週間だけに使ったのも正解でした」
順子さんが言うのは、いちばん大事だったのは「ケアマネさんに最初に出会えたこと」だそうです。介護休業を取った3週間の前半でケアマネを決めて、後半でサービス導入の段取りをつけた。この順序を守れたから、復帰後も走れた、と。
母は現在、特別養護老人ホームに入所。順子さんは55歳で転職経験なし、それでも仕事は続けられています。
制度を使う前の準備
「ケアマネ」を先に決める
介護休業を使う前に、信頼できるケアマネージャーを見つけることが最重要です。
- 住まいの市区町村の地域包括支援センター(無料)に相談
- ケアマネと合わないと感じたら、遠慮なく変更可能
- 事業所単位で変えたい場合は、包括に相談
会社の就業規則を読む
育介法の最低ラインは決まっていますが、会社によっては上乗せ制度があることがあります。
- 介護休業:93日 → 180日や1年に延長している会社も
- 介護休暇:5日 → 10日〜20日の会社も
- 介護費用の補助、ケアプラン費用の補助がある会社も
まずは人事・総務の担当者に聞くのが一番早いです。
上司への切り出し方
「親の介護が必要になりそうで、介護休業と時短勤務を組み合わせて使いたいです」
「辞めない」という前提を先に伝えるのがコツです。多くの上司は、退職より時短・休業のほうを歓迎します。新人教育コストを考えれば、それは当然のことです。
それでも辞めざるを得ないとき
それでも辞めるという選択になったとき、覚えておいてほしいことが3つあります。
- 離職票の「介護理由」を必ず記載してもらう。失業給付の受給期間延長などで有利になります。
- 健康保険・年金は任意継続または国民健保へ。国保は高くなりがちなので、任意継続(最大2年)のほうが安くなる場合があります。
- 地域のハローワークの「介護離職者向け再就職支援」を、辞めた直後から使い始める。
辞めるという判断自体は、ときには正しい判断です。ただ、それが「他に道がない」のではなく「いくつか道があるなかで、自分が選んだ道」になっていてほしい。この記事を書いた理由は、それだけです。
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相談できる窓口
- 勤務先の人事・総務:まず会社の制度を確認
- 都道府県労働局:総合労働相談コーナー(介護休業のトラブル)
- ハローワーク:介護休業給付金の申請・再就職相談
- 地域包括支援センター:介護全般の相談(無料)
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