ヨバナシ —女たちの秘密会議
介護

認知症の親の徘徊対策。GPS見守り3つの選び方と自治体補助

ヨバナシ編集部 読了 約7分

認知症による行方不明者は2024年に1.8万人と過去最高。GPS発見では昨年111人全員が生存していました。徘徊が始まる前に準備したいGPS端末3タイプの選び方、介護保険・自治体補助の使い方、親に持ってもらう工夫まで、実用情報をまとめます。

「お母さん、また家を出てしまって、夜中に警察から電話が」

認知症が進行すると、ある日突然、徘徊が始まります。警察庁の統計では、認知症による行方不明者は2024年に1万8,000人と過去最高(日経新聞報道)。

ここで重要なのは、GPSで発見された111人は、全員が生存して保護されたという事実です。徘徊そのものを止めるのは難しくても、早く見つけられれば命を守れる。

この記事では、徘徊が始まる前に準備したいGPS端末3タイプの選び方、介護保険・自治体補助の使い方、親に「持ってもらう」工夫を、現場の経験をもとにまとめます。

全体像から把握したい方へ:この記事は「親の介護」シリーズの一部です。離職を避ける制度・きょうだいでの分担・認知症対策・施設選びまでを9場面で整理した 親の介護に直面した50代娘の完全ガイド もあわせてどうぞ。

なぜGPSが必要か(徘徊で起きること)

朝の窓辺

徘徊は、ある日突然始まる

認知症の方が徘徊する原因は、本人にとっては「目的があって出かける」ことが多いです。「会社に行く」「子供を迎えに行く」「実家に帰る」、本人の頭の中では筋が通っているけれど、現実の道は分からなくなっている。

家族から見ると突然消えるので、準備してから対策では間に合わないケースが多発します。

見つかるまでの時間が、命に関わる

認知症徘徊GPSセンターの解説によれば、徘徊高齢者の発見が遅れるほど、転倒・脱水・低体温・交通事故のリスクが高まります。

冬場の夜なら、屋外で6時間で低体温症の危険。夏場なら3時間で熱中症。GPSによる早期発見は、命を直接守る装備です。

地域の「徘徊SOSネットワーク」だけでは不十分

多くの自治体に徘徊・見守りSOSネットワーク(地域包括支援センター・警察・タクシー会社などの連携)があり、これは大事な仕組みです。

ただし、SOSネットワークは「事前登録した本人を、見つけた人が通報する」仕組み。GPSは、家族が能動的に位置を確認するツール。両方併用するのが理想です。

GPS端末3タイプの選び方

タイプ1:専用GPS端末(小型・軽量)

代表的な製品:

  • iTSUMO(itsumono-gps.jp):累計3万人利用、介護保険適用自治体多数
  • みまもりGPS(セコム、ALSOKなど)

メリット:

  • 専用設計で電池が長持ち(1〜3週間)
  • 防水・耐衝撃
  • ボタン1つでSOS発信できる機種も
  • 介護保険・自治体補助で安く使える

デメリット:

  • 月額利用料がかかる(500〜1,500円)
  • 別端末を持たせる必要がある

こんな家庭におすすめ:徘徊リスクが高い、家族が遠方、24時間追跡したい

タイプ2:靴・服装に取り付けるGPS

代表例:

  • GPSシューズ(みまもりシューズなど)
  • 小型タグ型(衣類に縫い付け)

メリット:

  • 親が「持ち忘れる」リスクがゼロ
  • 普段使いの靴・服に組み込める

デメリット:

  • 充電が手間(特に靴型)
  • 履く靴・着る服が決まっていないと意味がない

こんな家庭におすすめ:いつも同じ靴を履く習慣、本人がGPSを嫌がる

タイプ3:スマホアプリ+スマホ持ち歩き

代表例:

  • NTTドコモ「イマドコサーチ」(imadoco.tda.docomo.ne.jp
  • iPhone「探す」アプリ+親のiPhone
  • Google ファミリーリンク

メリット:

  • 既に親がスマホを持っているなら追加コストほぼゼロ
  • 常時最新の位置情報が見える
  • 親が電話もLINEもできる

デメリット:

  • スマホを忘れて出かけたら意味がない
  • 充電を忘れがち
  • 認知症が進むとスマホ操作自体が難しい

こんな家庭におすすめ:認知症が初期、本人がスマホ操作できる

介護保険・自治体補助の使い方

介護保険でレンタル可能(要介護2以上が目安)

「徘徊感知機器」として介護保険の福祉用具貸与の対象になっています。要介護認定があれば、月額数百円〜1,500円程度の自己負担でGPS端末を借りられます。

申請の流れ:

  1. ケアマネジャーに相談(無料)
  2. ケアマネが福祉用具事業者を紹介
  3. 機種選定・契約
  4. 介護保険サービスとして月額自己負担

自治体独自の補助制度

多くの自治体に「認知症高齢者位置情報サービス」があります。

  • 東京都新宿区:機器代金・月額利用料を区が負担(条件あり)
  • 横浜市:徘徊SOSネットワーク登録者にGPS端末貸与
  • 群馬県高崎市:「はいかい高齢者救援システム」で5年で931件対応、全件早期発見

お住まいの市区町村の「高齢者支援課」または地域包括支援センターに「認知症徘徊 GPS 補助」と問い合わせてみてください。

親に「持ってもらう」工夫

穏やかな午後

GPSの最大の壁は、本人が嫌がる・忘れることです。

工夫①:「お守り」として渡す

「これは外出のお守りなのよ。いつも持ち歩いてね」

「監視されている」と感じさせない、安全のためのお守りとして渡すと受け入れやすい。神社のお守り袋にGPSを入れて、首から下げてもらう例もあります。

工夫②:日常持ち歩くものに固定

  • 財布・小銭入れに常にGPS:財布を持たない外出はほぼない
  • 杖の握り部分に取り付け:杖を使う方なら自動的に持ち歩ける
  • シルバーカー(手押し車)に:外出時は必ず使う

工夫③:充電を「家族の習慣」にする

毎晩、家族が寝る前に必ずGPSの電池をチェック・充電するルーティンを作ります。「親が忘れる」前提で、家族が代わりに管理するのが続けるコツ。

工夫④:複数の端末を併用

例:

  • スマホアプリ(屋内)+ 専用GPS(杖に固定)
  • どちらか1つでも動いていれば追跡可能

60代娘・恵子さん(仮名)の事例

恵子さん(62歳)の母(85歳)は2年前から認知症が進み、月1〜2回の徘徊が始まりました。最初は警察への通報、近所への聞き込みで対応していましたが、半年後にiTSUMOを導入。

導入後の変化

  • 母の杖の握り部分にGPSを固定(「お守り」として説明)
  • スマホアプリで現在地が地図上にリアルタイム表示
  • 自宅から500m以上離れたら家族のスマホに通知
  • 介護保険で月額600円の自己負担

効果

導入後1年で徘徊3回ありましたが:

  1. 30分以内に発見、本人と一緒に帰宅
  2. 隣町まで行ったが2時間で発見
  3. 朝5時の徘徊、6時に発見

「警察に頼る前に、家族が見つけられるようになった。これだけで夜眠れるようになった」

徘徊が始まる前に、やっておくこと

  1. 要介護認定の申請(地域包括支援センターで無料)
  2. ケアマネジャー選定(GPS含む福祉用具の相談に必要)
  3. 自治体の徘徊SOSネットワーク登録(無料、本人写真と特徴を提出)
  4. GPS端末の試用(多くの会社が1〜2週間の無料お試しあり)
  5. 家族間で「もし徘徊したら」の対応マニュアル共有
    • 110番通報のタイミング
    • 連絡網(兄弟・近所・施設)
    • 徘徊時の本人への声のかけ方

同じシリーズの他の話

関連記事

相談できる窓口

  • 地域包括支援センター(市区町村に必ずあり):無料
  • ケアマネジャー:福祉用具レンタルの手配
  • 自治体の高齢者支援課:補助制度の相談
  • 認知症の人と家族の会:当事者・家族の支援団体

秘密会議のみなさんへ

  • 2024年の認知症行方不明者1.8万人。GPSで発見された111人は全員生存
  • 徘徊が始まる前に準備するのが鉄則
  • GPS3タイプ:専用端末/靴に組込/スマホアプリ
  • 介護保険・自治体補助で月額500〜1,500円で導入可能
  • 「お守り」として持ってもらう、充電は家族管理

「うちの親はまだ大丈夫」と思っている時期こそ、準備のベストタイミングです。今夜、地域包括支援センターの番号を冷蔵庫に貼ってみてください。


※本記事は一般的な情報提供です。具体的な機種選定・補助制度・介護保険の利用は、お住まいの地域包括支援センター・ケアマネジャーにご相談ください。

= 関連する夜話 =

介護

車で4時間の実家、月1で帰る老老介護見守り3年の記録

82歳の父が、85歳の母を介護しています。私は車で4時間離れた都市に住む長女。月1の帰省と、毎日の電話と、見守りアプリと、近所の方との連絡網。3年間続けてきた遠距離での見守りの、本当に役に立った5つの仕組みと、それでも避けられなかった2回の急ぎ帰省を記録します。

#60代 #遠距離介護 #老老介護