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コラム

= COLUMN =

夫と手をつないだ、何十年ぶりかの話

ヨバナシ編集部 読了 約4分

夕暮れの神社の石段で、夫がふいに差し出した手。とっさに取ったその手は、記憶よりずっと節くれだって、あたたかいものでした。手をつなぐなんて、何十年ぶりだったでしょう。66歳のわたしが、照れくさくてあたたかい夕暮れの出来事を、ゆっくりお伝えします。

先日、夫と、手を、つなぎました。

こう、書くだけで、なんだか、照れくさくて、笑ってしまいます。

66歳と、68歳の、夫婦です。

手をつなぐなんて、いったい、何十年ぶりだったでしょう。

今日は、その、夕暮れの、小さな出来事の話を、お伝えします。

なお、これは、わたし個人の、体験です。夫婦のかたちは、ご家庭ごとに、違います。あくまで、ひとつの話として、お読みください。

夕方の散歩が、日課になって

わたしたち夫婦は、去年から、夕方の、散歩を、日課にしています。

夕飯の、支度の前に、近所を、ぐるりと、30分ほど。

はじめは、健康のためでした。

医者に、ふたりして、「歩いてください」と、言われたからです。

最初の頃は、会話も、ぽつり、ぽつり。

夫は、半歩先を、歩いて、わたしが、あとを、ついていく。

長年の、癖のような、並び方でした。

それでも、続けるうちに、少しずつ、横に、並んで、歩くように、なって。

道端の、花の名前や、よその家の、猫の話なんかを、するように、なりました。

別記事(定年後の夫と、週1回の二人ランチを始めた話)にも書きましたが、夫婦の、時間は、こういう、小さな、決まりごとから、育っていくのだと、思います。

神社の、石段で

その日は、いつもより、足を、のばして、近所の、神社まで、歩きました。

夕暮れの、境内は、静かで、石段には、木の影が、長く、のびていました。

その、石段を、降りるとき、です。

前の日に、雨が、降ったせいで、石段は、少し、湿っていました。

わたしが、一段目で、ちょっと、よろけたのを、見て、夫が、ふいに、手を、差し出したのです。

「ほら」

ぶっきらぼうな、ひとこと。

わたしは、とっさに、その手を、取りました。

記憶より、ずっと、節くれだった手

つないだ、夫の手は、記憶に、あるものより、ずっと、節くれだって、いました。

そりゃあ、そうです。

最後に、つないだのは、たぶん、子どもたちが、小さかった頃。

家族四人で、出かけた、帰り道、眠った下の子を、夫が、おぶって、わたしと、上の子が、手をつないで。

あのとき、ふざけて、夫とも、つないだような。

そんな、おぼろげな、記憶ですから、もう、35年以上も、前のことです。

あれから、子どもたちは、巣立って。

いろんなことが、あって。

気がつけば、手をつなぐことなんて、いっぺんも、ないまま、おたがい、60代に、なっていました。

石段が、終わっても

石段は、ほんの、十数段でした。

降りきったら、手は、離れるものだと、思っていました。

ところが、夫は、離さないのです。

わたしも、なんとなく、離しませんでした。

ふたりとも、何も、言いません。

顔も、見ません。

まっすぐ、前を、向いたまま、夕暮れの、道を、手をつないで、歩きました。

すれ違った、犬の散歩の、若い方に、見られて、わたしは、内心、少し、あわてました。

でも、その方は、にこっと、笑って、会釈を、して、通り過ぎて、いきました。

なんだか、それが、うれしかった。

「転ばれたら、困るからな」

家の、角まで、来たとき、夫が、ぼそっと、言いました。

「転ばれたら、困るからな」

わたしは、笑いを、こらえて、「はいはい」と、答えました。

素直じゃ、ないのです、うちの夫は。

40年、連れ添って、それは、もう、よくよく、知っています。

でも、その、素直じゃない、ひとことの、奥にあるものも、40年で、わかるように、なりました。

別記事(金婚式を迎えた日、夫と振り返った50年)を書かれた方の、ご主人の、「お前と、結婚してよかった」に、くらべたら、ずいぶん、遠回りな、言い方です。

それでも、ちゃんと、届きました。

手をつなぐのに、理由がいる年頃

若い頃は、手をつなぐのに、理由なんて、いりませんでした。

いまは、「石段が、濡れているから」「転ばれたら、困るから」。

理由が、ないと、つなげない。

でも、それで、いいのだと、思います。

雨上がりの、石段でも、段差の、多い道でも、口実は、なんでも、いい。

その口実を、くれる、相手が、隣にいることが、ありがたいのです。

これからは、膝も、足腰も、弱っていく、ふたりです。

手をつなぐ、理由は、きっと、年々、増えていきます。

それは、さびしいことでは、なくて、つなぐ手が、ある、しあわせなのだと、あの夕暮れに、教わりました。

さいごに

夕暮れの、神社の石段で、夫と、何十年ぶりかに、手をつなぎました。

節くれだって、あたたかい手。

「転ばれたら、困るからな」の、ぶっきらぼうな、ひとこと。

60代の、夫婦の、手つなぎには、口実が、いります。

でも、口実さえ、あれば、いくつになっても、つなげるのです。

今度の、散歩で、段差や、坂道が、あったら。

ちょっと、よろけた、ふりでも、してみては、いかがでしょう。

案外、すっと、手が、出てくるかも、しれませんよ。

夫婦の散歩や、ふたりの時間の、話は、別記事(65歳の夫婦が、本当に行ってよかった国内旅行3カ所)も、あわせて、ご覧ください。

なお、夫婦のかたちは、ご家庭ごとに、本当に違います。おふたりの、ペースで、心地よい、距離を、見つけてみてください。

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#60代 #夫婦 #ルール