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義妹に『お姉さんは恵まれてる』と言われて気づいたこと

ヨバナシ編集部 読了 約6分

義実家での集まりの帰り際、義妹がぽつりと『お姉さんは恵まれてるね』と言いました。一瞬、嫌味に聞こえた言葉が、何ヶ月もわたしの胸に残り、半年たって、ようやく義妹の本当の気持ちに気づいた話です。義妹との関係に悩む60代妻に、ひとつの記録として。

「お姉さんは、恵まれてるね」

去年のお盆、義実家から帰る玄関先で、義妹がわたしに、そう言いました。

義妹は、夫の妹で、わたしより7歳下、いま55歳です。

その日、わたしと義妹は、お盆の集まりで、ほとんど話していませんでした。 義母の手伝いを、わたしが台所、義妹がお茶出し、というかたちで、自然に役割分担して、過ごしていました。

帰り際、玄関で、靴を履いているわたしの背中に、義妹が、ぽつりと、言ったのです。

「お姉さんは、恵まれてるね」

一瞬、わたしは、その言葉の意味が、分かりませんでした。

「嫌味かな」と感じました。

その日から、その言葉が、ずっと、わたしの胸に残りました。

半年たって、ようやく、わたしは、義妹の本当の気持ちに気づいたのです。

そして、それが、義妹との20年の関係を、ぐるりと、回してくれました。

わたしと義妹の、20年

夫の妹である義妹と、わたしは、結婚以来、20年のおつき合いです。

お互いに、嫌い合っていたわけでは、ありません。 ただ、特別に親しいわけでも、ありません。

義実家での集まりで、年に2、3回、顔を合わせる、それだけの関係でした。

義妹は、ご主人と、お子さんふたりがいて、義実家から車で20分のところに住んでいます。 わたしは、夫と、息子(独立)で、義実家から車で1時間。

つまり、義妹のほうが、義両親に近い距離で、日常的にいろんなことを手伝っている、立場でした。

わたしは、お盆と正月くらいしか、義実家に行かない「遠い嫁」でした。

「恵まれてる」と言われた、本当の理由

最初、わたしは、義妹の「恵まれてる」を、こう受け取りました。

「お姉さん(わたし)は、お父さんお母さん(義両親)から、遠いところに住んでて、楽でいいわね」

つまり、義両親の介護や日常的な世話を、義妹がほぼ全部やっていることへの、嫌味だ、と。

そう感じて、しばらく、わたしは義妹に、申し訳ない気持ちと、それでも腹立たしい気持ちを、同時に抱えていました。

「遠くに住んでるのも、好きで遠くに住んでるわけじゃない」と、心の中で言い訳していました。

ですが、半年たって、わたしは、義妹の「恵まれてる」が、たぶん、別の意味だったのではないか、と気づきました。

きっかけは、その秋、義母から、ぽろっと聞いた話でした。

義母から聞いた、義妹の本当の苦しみ

10月のある日、義母から電話があって、こう聞いたのです。

「あのね、由紀子さん(わたし)。ちょっと、聞いてほしいことがあって。実は、亜希子(義妹)が、最近、すごく疲れてるみたいで」

義母の話を、要約すると、こうでした。

義妹は、義両親の介護を、ほぼひとりで担っていました。 週3回、義実家に通い、料理、掃除、買い物、通院、銀行手続き、ぜんぶ義妹がやっていました。 そのうえで、自分の家のこと、お子さんの大学受験の対応、ご主人の単身赴任先への定期的な訪問、すべてを抱えていました。

義妹は、義母に、ぽつりと、こうこぼしていたそうです。

「お姉さん(わたし)は、定期的に顔を出すだけで『いい嫁ね』って言われる。わたしは、毎週通ってるのに『当たり前』って言われる。お姉さんが、ちょっとうらやましい」

うらやましい。

恵まれてる。

「お姉さんは、恵まれてるね」は、嫌味ではなく、義妹の、深い疲れと、孤独の、本音だったのです。

わたしが、義妹に電話した日

義母の話を聞いて、わたしは、しばらく動けませんでした。

20年、義妹のことを、本当には、見ていなかった。

義妹が、義両親の介護で、どれほど疲弊しているか。 義妹が、わたしのような「遠い嫁」を、どんな目で見ていたか。 義妹が、義母や義父に「ありがとう」をどれほど言われていないか。

ぜんぶ、わたしは、見ていなかったのです。

その夜、わたしは、義妹に電話しました。

20年のつき合いで、義妹に電話するのは、たぶん、5回目くらいでした。

「亜希子さん、いま、お電話、大丈夫?」

義妹は、少し驚いたようでしたが、出てくれました。

わたしは、義母から聞いた話には、触れませんでした。 代わりに、こう切り出しました。

「亜希子さん、いつも、お父さんお母さんのこと、本当に、ありがとう。わたし、なかなか通えなくて、本当に申し訳ないと思ってる」

義妹は、しばらく黙っていました。

そして、こう答えました。

「お姉さん。そんなふうに言ってくれたの、たぶん、20年で初めてです」

電話の向こうで、義妹が、少し、泣いているのが、分かりました。

「ありがとう」だけで、ぐるっと変わった

その電話のあと、わたしと義妹の関係は、少しずつ、変わりました。

月に1回、わたしから義妹に、ショートメールを送るようになりました。

「亜希子さん、最近、お父さんお母さん、お元気?無理しないでね」

最初、義妹からの返事は、短いものでした。 1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月。

3ヶ月目くらいから、義妹のほうから、長めのメールが来るようになりました。

「今日、お母さんが、転びそうになって、ヒヤッとした」 「お父さんの薬が、また変わって、覚えるのが大変」 「正直、わたし、もう限界かもしれない」

「もう限界かもしれない」と、義妹が、わたしに本音を打ち明けるようになったのは、半年たった頃でした。

わたしは、義妹に、ケアマネさんや地域包括支援センターの利用を、メールで紹介しました。 わたし自身も、月1回、平日に義実家に行く、と約束しました。

20年で、わたしと義妹は、初めて、「義両親の世話を、二人で考える」関係になりました。

1年経って、義妹がわたしに言ったこと

1年経った今年のお盆、義実家の集まりで、義妹がわたしに、こう言いました。

「お姉さん。去年、お姉さんが電話くれたあと、わたし、3日、ぼんやりしました。誰かが、わたしの大変さを、見てくれたんだ、って思ったから」

「お姉さんは、義両親のことで、わたしより距離が遠いから、できないことが、たくさんある。それは、わかってた。でも、せめて、わたしの大変さを、誰か、見てくれたら、それで十分だったの」

55歳の義妹が、20年の本音を、わたしに言ってくれた、その瞬間でした。

わたしは、20年、義妹の大変さを、見ていなかったのです。 というより、見ようとしていなかったのです。

なぜなら、見たら、自分も動かなきゃいけない、と心のどこかで分かっていたから。

その心の壁が、義妹の「お姉さんは、恵まれてるね」のひと言と、義母からの電話で、ようやく崩れました。

そして、崩れたあとに、わたしと義妹は、初めて「義両親を、ふたりで支える」立場に、立てたのです。

「恵まれてる」と言われたら、まず聞いてみる

義妹や、義姉や、ご主人の親族から、「お姉さんは、恵まれてるね」と言われた経験のある方は、たぶん、少なくないと思います。

最初、嫌味に聞こえます。 あるいは、皮肉に聞こえます。

ですが、その言葉の奥に、相手の、深い疲れや、孤独や、見てもらえない悲しさが、隠れていることがあります。

もし、ご縁があれば、こう聞いてみてください。

「亜希子さん(義妹の名前)、もしかして、最近、すごく大変じゃない?」

直接的すぎる質問ですが、たぶん、相手は、ホッとして、本音を話してくれるはずです。

「恵まれてるね」と言われたあと、嫌味に受け取って距離を取るのではなく、もう一歩、踏み込んで、相手の話を聞いてみる。

これだけで、20年の関係が、ぐるっと、変わることが、あります。

わたしの場合は、変わりました。

55歳の義妹と、62歳のわたしが、いま、初めて「同じ義実家を支える、対等の仲間」になれた、この感覚は、20年で、いちばん、わたしを救ってくれました。

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さいごに

義妹と20年、表面的にやってきました。

「恵まれてる」のひと言が、わたしの20年の見落としを、教えてくれました。

人の言葉は、表面の意味と、本当の意味が、違うことが、よくあります。

特に、義妹や義姉のような「直接の親族ではないけど、近い人」の言葉は、本音を、何重にも包んで、ぽろっと出てきます。

それを、表面の意味だけで受け取ると、関係は、20年でも30年でも、深まりません。

ですが、本当の意味を聞こうとすると、たぶん、相手は、答えてくれます。

少なくとも、わたしと義妹の場合は、答えてくれました。

そして、20年の見落としが、たぶん、これから10年、20年の支え合いに、変わっていく予感がしています。

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