親が入院した日、わたしの最初の3時間でやったこと
82歳の父が突然救急車で運ばれた日、わたしは病院に駆けつけた最初の3時間で、何をすべきか分からず混乱しました。あれから3年、当時を振り返って、もし今もう一度同じ場面に立つなら絶対にやる5つのこと、そしてやらないほうがよかった3つのことを記録します。親の急変が心配な60代の方に。
3年前の春の朝、わたしは父が救急車で運ばれたという電話を、近所の方から受けました。
82歳の父が、玄関先で倒れていたところを発見されたのです。 意識はあるが、ろれつが回らない状態だ、と聞きました。
わたしは、車で40分かけて、父が運ばれた病院に向かいました。
その日の最初の3時間、わたしはほとんどの時間、待合室で混乱していました。
何をすればいいのか、何を聞けばいいのか、何を準備すればいいのか、何も分からなかったのです。
あれから3年。父はいま、自宅に戻り、介護サービスを受けながら、母と二人で暮らしています。
ただ、もし時間を巻き戻して、もう一度あの日の最初の3時間を過ごせるなら、わたしは絶対に違う動き方をします。
この記事では、わたしが3年かけて学んだ「親が入院した日、最初の3時間でやるべき5つのこと」と「やらないほうがよかった3つのこと」を、お伝えします。
なお、急変時のいちばんの相談先は、地域包括支援センターです。
地域包括支援センターは、市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等を配置して、住民の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行う
親の急変は、いつでも突然やってくる
まず、お伝えしたいのは、親の急変は本当に突然来る、ということです。
わたしの父は、その朝まで、まったく普通に暮らしていました。
前日の夜、わたしは父と電話で話していました。「今日は花見に行ってきた」と機嫌よく話していたのです。
それなのに翌朝、玄関先で倒れていた。
「うちの親はまだ元気だから」と思っていても、それは「今日まで」の話です。
明日急に同じことが起こる可能性は、60代の親世代には、いつもあります。
だから、心の準備は早ければ早いほどいい、と3年経って思います。
やるべきこと① 自分の体を整える(車中で深呼吸する)
これがいちばん大事でした。
電話を受けて、わたしは慌てて家を出ました。
車を運転しながら、ずっと頭の中で「お父さん死んだらどうしよう」「もう間に合わないかもしれない」と考えていました。
病院に着いたとき、わたしは過呼吸ぎみで、手が震えていました。
その状態では、医師の説明を、半分も理解できませんでした。
3年経って思います。
車中で、深呼吸を10回するだけで、ぜんぜん違ったはず、と。
「最悪のシナリオ」を頭の中で先に考えても、いいことはありません。
病院に着いたら、まず自分が話を聞ける状態にしておく。 そのためには、車中・電車内の移動時間に、深呼吸して、自分を落ち着けることが、最初の3時間の入口です。
やるべきこと② 親の名前・生年月日・保険証番号をすぐに言える状態にする
病院に着くと、最初に受付で「ご家族の方ですか?お名前と生年月日、保険証番号をお願いします」と聞かれました。
わたしは、父の名前と生年月日はもちろん答えられました。
ですが、父の保険証番号は、わかりませんでした。
「あとで連絡します」と言って、受付を後にしたのですが、その「あとで」が、後の3時間ずっと頭の片隅に引っかかったのです。
もし今もう一度この場面に立つなら、わたしは絶対に、車中で母に電話し、父の保険証番号を口頭で読み上げてもらって、スマホのメモに書き留めておきます。
これは、たぶん30秒で済むことです。
その30秒を惜しまないだけで、病院での自分のストレスが、ずいぶん減ります。
やるべきこと③ 医師の説明は「メモ」「スマホ録音」する
これが、いちばん後悔したことです。
医師が、父の状況を説明してくれました。
「脳の血管に詰まりが見つかりました。〇〇という処置をします。リスクは△△と□□です。投薬は××で、効果は・・・」
わたしは、必死で聞いていたつもりでした。
でも、家に帰って、母に説明しようとしたとき、半分も覚えていませんでした。
医師の名前すら、メモしていなかったのです。
3年経って思います。
医師の説明を受けるときは、必ずスマホでメモを取るか、できればスマホで録音させてもらうことです。
録音は、医師に「家族に正確に伝えたいので、録音させていただいてもいいですか」と一言断れば、ほとんどの医師は了承してくれます。
メモも、字が汚くてもいいので、医師の言葉をそのまま書き留めることです。
このメモか録音が、あとで家族と話すとき、ケアマネさんに相談するとき、本当に役に立ちます。
やるべきこと④ 連絡網を「優先順位」で動かす
親が入院したことを、誰に、いつ、どんな順で連絡するか。
これも、わたしは現場で混乱しました。
「お兄ちゃんに先に言うべきか」 「義姉さんを通すべきか」 「妹は今、海外旅行中だから後でいいのか」 「父の兄弟にも知らせるべきか」 「自治会長さんにも言うべきか」
頭がぐるぐるして、結局、わたしは思いつくまま、5人くらいに、てんでばらばらに電話とLINEを送りました。
結果、後で「なんで僕に最初に言わなかったんだ」と兄から怒られました。
3年経って分かったのは、「連絡網の優先順位」を、平時に決めておくべきだった、ということです。
- 第1優先: 配偶者(母)
- 第2優先: 兄弟姉妹(全員、同じLINEグループに同時送信)
- 第3優先: ケアマネさん・かかりつけ医
- 第4優先: 親の兄弟・親族(必要があれば、第1〜第3対応が落ち着いてから)
- 第5優先: 自治会長・近所(これも後でいい)
このリストを、いまわたしはスマホのメモに保存しています。
次に何かあったときは、リストの上から順に連絡するだけで、頭を使わずに済みます。
やるべきこと⑤ 「今日の自分」と「明日からの自分」を分ける
これは、3年経った今、いちばん大事だと感じていることです。
入院初日、わたしは「今日中にぜんぶ片付けなきゃ」と思いこんでいました。
母を病院に連れていくこと、入院用品を揃えること、当面の入院費を準備すること、保険会社に連絡すること、職場(夫の)に連絡すること、子どもたちに連絡すること、ぜんぶ。
これを夜10時まで、ノンストップでやりました。
その夜、わたしは家に帰ってきて、玄関で泣き崩れました。
体力が尽きていました。
3年経って思います。
「今日やるべきこと」と「明日でもいいこと」を、最初の3時間のうちに分けるべきだった、と。
今日やるべきこと
- 医師の話を聞く
- 保険証番号を伝える
- 母と直接話す
- 当座の入院用品(下着・タオル・スリッパ・ティッシュ)を1日分だけ用意する
明日でもいいこと
- 入院用品をフルセット揃える
- 保険会社への連絡
- ケアマネさんへの連絡
- 親族への詳しい説明
最初の3時間に「今日だけのリスト」を作って、それ以外は「明日でいい箱」に入れる。 この区分けができていたら、わたしはあの夜、玄関で泣き崩れなかったかもしれません。
やらないほうがよかった① ネットで症状を検索する
待合室で、わたしは「脳梗塞 82歳 余命」と検索してしまいました。
出てくる情報の多くは、不安をかきたてるものでした。
「平均余命2年」「半数が3ヶ月以内に再発」「介護度4以上になることが多い」
これを読んで、わたしはさらに混乱しました。
実際、3年経ってわかったのは、ネットの一般情報は、目の前の自分の親の状態には、必ずしも当てはまらないということです。
医師が言う「個別の状態」のほうが、はるかに正確です。
待合室では、検索はやめて、医師の話を待つのが正解でした。
やらないほうがよかった② 親族の長老に最初に電話する
わたしは、混乱の中で、父の兄(70代後半)に最初に電話してしまいました。
「血のつながった最年長者に、まず相談したほうがいい」と思ったのです。
ところが、伯父はわたし以上に混乱して、「すぐお見舞いに行く」「今夜には病院に駆けつける」と言い出しました。
伯父も82歳近い高齢で、しかも遠方在住。とても駆けつけられる状態ではなかったのです。
伯父をなだめるのに、結局1時間使いました。
3年経って思います。
最初の連絡は、必ず「冷静に判断できる、近い世代の人」にすべきです。
兄弟姉妹がいない場合は、配偶者(母)に第一報を入れて、それから少し落ち着いてから親族に広げる。
このほうが、結果的に混乱が少ないです。
やらないほうがよかった③ 「もう動けない」のに動き続ける
夜の8時を過ぎて、わたしは疲れ切っていました。
それでも「今日中にぜんぶ」とこだわって、入院用品を揃えに、夜の10時まで店を回りました。
夜遅くに買った下着は、サイズが合わず、翌日もう一度買い直すことになりました。 疲れた状態で買い物すると、判断が雑になります。
3年経って思います。
「もう動けない」と感じたら、いさぎよく休む。 入院用品なんて、明日の朝1時間あれば揃います。
自分の体力を、最初の3時間で使い切らないこと。 これは、入院した親を長く支えるために、本当に大事なことでした。
平時にできる、3つの準備
最後に、まだ親が元気な今、できる準備を3つだけお伝えします。
ひとつめは、親の保険証番号、診察券、お薬手帳、緊急連絡先を、コピーで持っておくことです。 スマホで写真を撮るだけで十分です。これがあると、急変時の最初の30分が、ぜんぶ変わります。
ふたつめは、親のかかりつけ医・かかりつけ薬局を、書き留めておくことです。 緊急時、「最近どんな薬を飲んでいるか」を、医師から必ず聞かれます。お薬手帳の写真が、いちばん早い答えです。
みっつめは、兄弟姉妹で「連絡網の優先順位」を、いま話し合っておくことです。 急変があってから話し合うと、感情的になります。今のうちに、「お父さんに何かあったら、まずLINEグループに送ろう。電話は混乱するから」など、ルールを決めておくと、当日のストレスが減ります。
さいごに
親の入院は、いつか必ず、訪れます。
そのとき、最初の3時間で、わたしのように混乱して泣き崩れる必要は、ありません。
「自分を整える」「保険証番号を確認する」「医師の話を録音する」「連絡網を順番通り動かす」「今日と明日を分ける」
この5つを、いま、頭の片隅にでも入れておいてください。
3年前のわたしのように、玄関で泣き崩れる60代の方が、ひとりでも減ればいいと願って、書きました。
なお、入院対応や治療判断は、それぞれの状況・地域・医療機関で大きく異なります。実際の判断は、必ず医師やケアマネジャーさんとのご相談で進めてください。
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