子が巣立った後の仮面夫婦10年。妻が出した答え
5組に1組が仮面夫婦、50代の約19%が自覚している、データよりも重い、10年続けた60代妻の本音。なぜ離れなかったのか、続ける・別れるを決める3つの軸、いま別室で暮らす1日のリアル。体験談として、これから選択する方への道しるべを。
「あなたは仮面夫婦ですか?」
そう聞かれて、迷わず「違う」と答えられる夫婦は、たぶん多くありません。
株式会社リンクスの既婚者3,000人調査では、夫婦の約5組に1組が仮面夫婦と自覚しており、50代の約19%、60代の約18%が該当すると答えています(株式会社リンクス発表)。家庭内別居の経験がある人は50代で46%、60代でも46%。
数字だけ見ると「よくあること」のように感じますが、当事者にとっては人生そのものです。
この記事は、仮面夫婦を10年続けた60代の妻、美和子さん(仮名・62歳)の体験記録と、そこから見えた「続ける・別れるを決める3つの軸」です。
全体像から把握したい方へ:この記事は「熟年離婚・夫婦」シリーズの一部です。離婚・卒婚・死別の判断、年金分割、住まい、弁護士の選び方までを8場面で整理した 熟年離婚を考えはじめた50〜60代女性の完全ガイド もあわせてどうぞ。
仮面夫婦になったきっかけ
結婚25年目、娘の大学入学の春
美和子さんの夫は、外では「おだやかで良い人」。家では15年以上、美和子さんをほとんど見ない、話しかけない生活が続いていました。
きっかけは、娘が生まれた頃に夫が副業でのめり込んだ株式投資。家計に関する事後報告と、度重なる損失が、夫婦の信頼関係を静かに壊していきました。
美和子さん:「一度、真剣に離婚を考えたのは40代前半。でも娘が小学校に上がる年で、環境を変えたくなかった」
そこから25年、美和子さんは”母”としての役割で家の中に居続け、夫婦としては事実上終わっていたのです。
子供は、気づいていた
娘が高校生の頃、ぽつりと言ったそうです。
「お母さん、私がいなくなったら、お父さんと離婚するの?」
美和子さんは返事ができませんでした。子供は、気づいている。これは仮面夫婦で一番辛いところかもしれません。
続ける・別れるを決める3つの軸
仮面夫婦10年を過ごしてきた美和子さんが、「結論を出す前に問うべき」と振り返る3つです。
軸1:経済、自分ひとりで生きていけるか
冷徹ですが、最重要の軸です。
- 自分名義の預金はいくらあるか
- 年金は月いくらもらえるか(ねんきん定期便で確認)
- パート・仕事で稼げるか
- 住居は確保できるか
離婚後の生活費シミュレーションをやらずに、感情だけで決めないこと。離婚して半年で生活が立ち行かなくなる60代女性は、実は少なくありません。
軸2:健康、自分の心身は耐えられるか
- 仮面夫婦のまま続けて、体調を崩していないか
- 継続ストレスがうつや更年期悪化につながっていないか
- このあと10年、今のペースで生きられるか
心療内科で「このままだと鬱になる」と言われるレベルであれば、別れる方が正しい選択のこともあります。
軸3:子どもへの影響、子供はどう感じているか
- 子供が成人しているか
- 子供が仮面夫婦の実態を知って苦しんでいるか
- 孫の前で夫婦喧嘩・冷戦が起きていないか
子供がすでに独立していれば、実は多くの場合「お母さん、自分の人生を生きて」と応援してくれます。子供のために我慢している、という前提そのものが、時代遅れになっている可能性があります。
美和子さんが出した答え、離婚「しない」を選んだ理由
美和子さんは、62歳で離婚しない選択をしました。
離婚「しなかった」理由
- 経済:離婚後の年金分割見込みが月3万円。貯金1,200万円でも心許ない
- 健康:体調はそこそこ安定。仕事も好きで続けたい
- 子ども:娘が結婚して孫ができ、孫の成長に軸足を置きたい
その代わりに「変えた」3つのこと
① 寝室を別にした
「部屋が違うだけで、朝起きたときの気持ちが全然違う。一人の時間を、取り戻せた感覚」
② 家事の分担を半分ずつに
「洗濯は夫、夕食は私、掃除は週替わり。家庭内のパートナーシップという感じで、感情的な夫婦ではなくなった」
③ 月2回、友人とのランチを固定予約
「自分の人生があるんだ、と意識するために、夫とは無関係の予定を入れるようにした。これが一番効いた」
5年後、美和子さん62歳の今
「仮面夫婦のままだけど、昔ほど辛くない。夫とは無言だけど、お互い生活のリズムが整って、むしろ気楽。離婚して独りになっていたら、この穏やかさはなかったかもしれない、とも思う」
“離婚しない仮面夫婦”を、選べるということを、美和子さんは示しています。
別れる選択をした人の例:63歳・澄江さん(仮名)の場合
対極に、離婚を選んだ63歳の女性の話も紹介します。
- 夫が定年退職して24時間家にいるようになり、仮面夫婦が耐えられなくなった
- 経済的には夫の退職金の一部を財産分与で受け取り、年金分割で月5万円の上乗せ
- 子供2人とも独立、「お母さん、もう自由に生きていいよ」と応援
澄江さん:「夫の定年は、仮面夫婦にとって分岐点。家にいる時間がゼロだった夫が24時間に増えた瞬間、もう続けられないと決まった」
どちらが正解かは、その人の経済・健康・子供との関係による。美和子さんと澄江さんの例は、どちらも”正解”です。
仮面夫婦を続ける場合の”整え方”
別れない選択をしたあなたへ:
物理的な距離を作る
- 寝室分離(最優先)
- 書斎・趣味部屋を別に
- 朝食または夕食をずらす
- お風呂の時間固定
経済的な独立を進める
- 自分名義の口座を必ず持つ
- へそくり(と呼ぶと小さく聞こえるが、“自分の資金”)を年◯万ずつ
- パート・仕事を続ける or 再開
精神的な逃げ場を持つ
- 週1回の友人ランチ
- 月1回の一人旅・温泉
- カルチャーセンター・趣味の教室
- 心療内科やカウンセリングの併用(必要なら)
結婚している=一体、ではないと割り切ることが、仮面夫婦を生きる知恵です。
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相談できる窓口
- 心療内科・女性外来:ストレスが身体症状に出ているとき
- 法テラス:離婚の法律相談
- 全国女性シェルターネット:DV・モラハラが絡む場合
- 夫婦関係専門のカウンセラー:感情整理と意思決定のサポート
秘密会議のみなさんへ
- 5組に1組が仮面夫婦。特別なことではない
- 続ける・別れるを決めるのは、経済・健康・子どもの3軸
- 離婚”しない”を選ぶことも、正解
- 物理的距離・経済的独立・精神的逃げ場の3つを作れば、仮面夫婦でも穏やかに暮らせる
- 夫の定年は、分岐点になりやすい
結婚している、していない、どちらが幸せかは、他人が決めることではありません。あなたが、あなたの人生を選ぶ権利を、今夜もう一度確認してください。
※本記事は体験談の紹介と一般論です。個別のご事情については、カウンセラー・弁護士・心療内科など専門家にご相談ください。
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