ヨバナシ —女たちの秘密会議
介護

介護をめぐる兄夫婦との合意、書面に残した話と書き方

ヨバナシ編集部 読了 約6分

85歳の母の介護をめぐって、兄夫婦とわたしで合意事項をA4の書面に残しました。介護費用の分担、介護休業の取り扱い、母の意思の確認方法、施設入居の判断基準。62歳の妹が、ケアマネジャーさんの助言のもと作った書面の中身と、書面化したことで防げた揉めごとを、お伝えします。

85歳の母が要介護2になったとき、わたしと兄夫婦で、いちばん最初にやったのは、「合意事項」をA4の書面に残すことでした。

これは、わたし自身の発案ではなく、母のケアマネジャーさんが、強く勧めてくれたことでした。

「ご家族で介護を始める前に、口約束ではなく、文書で合意を残しておくと、後で必ず助かりますよ」

ケアマネさんの、この言葉を信じて、わたしと兄夫婦は、半日かけて、A4の書面を作りました。

別記事(父の介護で兄と仲違いした、解けるまでの2年)に書いた、わたしの兄との苦い経験が、母の介護では絶対に繰り返したくなかった、というのも、大きな理由でした。

この記事では、書面化のメリット、実際の書面の中身、書き方の手順を、お伝えします。

重要なお断り:この記事は、わたしの家族のケースです。介護をめぐる兄弟間の取り決めは、ご家庭ごとに大きく違います。実際の進め方は、ケアマネジャーさんや、必要に応じて弁護士・行政書士などの専門家にご相談ください。

書面化のメリット(2年使ってみて)

最初に、書面化のメリットを、2年使ってみた結果から、お伝えします。

ひとつめ、「言った」「言わない」のトラブルが、ゼロになった。

口約束だと、半年後、1年後に「あれ、そう決めたっけ」「いや、違ったよ」となります。 書面があれば、いつでも、見返して、確認できます。

ふたつめ、新しい問題が出たとき、判断の基準になる。

母の状態は、半年ごとに変わります。 新しい問題(夜中の徘徊、転倒など)が出るたびに、「最初に決めた合意の延長で、どう対処するか」を、書面ベースで話し合えます。

みっつめ、配偶者(義姉)との関係が、楽になる。

兄ひとりではなく、兄の妻(義姉)も、介護の判断に関わります。 書面があると、義姉も「最初の合意」を理解した上で動けます。義姉とのトラブルが、ぐっと減りました。

書面の中身(8項目)

実際の書面の中身を、整理してお伝えします。

項目1: 母の状態と、現在のケアプラン

  • 母の年齢、要介護度、診断病名
  • かかりつけ医、ケアマネジャーの連絡先
  • 現在利用している介護サービス(訪問介護、デイサービス、ショートステイ)
  • 月の介護保険利用額(自己負担分の概算)

項目2: 介護費用の分担

  • 介護保険の自己負担分: 母の年金から
  • 母の年金で足りない分: わたしと兄で折半
  • 大きな出費(施設入居一時金など): 別途相談
  • 領収書は、わたしが保管、年1回兄夫婦に共有

項目3: 介護の物理的な分担

  • 平日のメインの動き(訪問・付き添い): わたし
  • 月1回の通院付き添い: 兄(交代制)
  • 緊急時(夜間・救急): わたしがまず駆けつける
  • 兄夫婦の負担が増えるケース: 別途相談

項目4: 連絡網と情報共有

  • 緊急時の最初の連絡先: わたしの携帯
  • 第2連絡先: 兄夫婦のLINEグループ
  • ケアマネさんからの連絡: わたしが受け取り、24時間以内に兄夫婦と共有
  • 月1回、わたしから兄夫婦に書面で「今月の母の状態」を報告

項目5: 母の意思の確認方法

  • 大きな判断(施設入居、医療判断など)は、必ず母本人の意思を確認
  • 母が認知症で判断が難しくなったら、母が以前に書いたエンディングノートを参照
  • 兄妹だけで母の意思を勝手に決めない

項目6: 施設入居の判断基準

  • 母が「家にいたい」と言っているうちは、自宅介護を優先
  • 自宅介護が物理的に無理になった時(寝たきりなど)、施設を検討
  • 施設入居の最終判断は、ケアマネさんと医師の意見を聞いた上で、わたしと兄で
  • 施設の選定は、わたしが3〜5箇所見学、兄夫婦と一緒に最終決定

項目7: 介護がわたしの体調に影響したとき

  • わたしの体調が崩れたら、すぐに兄に伝える
  • ショートステイで母を1週間預けて、わたしが休む
  • 兄夫婦が一時的にメインの介護を引き継ぐ
  • これが慢性化したら、施設入居を再検討

項目8: 相続への影響(将来の参考)

  • わたしの介護負担が大きいことを、母の遺言に「寄与分」として明記してもらうよう、母に依頼
  • 介護費用の領収書は、相続時の参考資料として保管
  • 兄妹間で、これを「公平でない」と感じる場合は、相続時に再協議

書面の書き方(A4で1枚〜2枚)

書面は、特別なフォーマットは、要りません。 わたしたちは、A4の紙2枚に、上記8項目を、手書きで書きました。

タイトルは「母の介護に関する家族合意書」。

最後に、3人(わたし、兄、義姉)の署名と日付を、それぞれ書きました。

弁護士に作ってもらった、法的拘束力のあるものではありません。 あくまで「家族の話し合いの記録」です。

ですが、これがあるだけで、家族の動きが、ぜんぜん変わります。

書面化に、半日かけた理由

書面化のための話し合いに、わたしたち3人(わたし、兄、義姉)は、半日(午後1時から夕方6時)を、使いました。

最初の30分で、項目を決め、残り4時間半で、ひとつずつ、合意を取っていきました。

時間がかかったのは、項目2(費用)と、項目7(わたしの体調)でした。

費用は、「折半」と決めるのに、1時間近くかかりました。 兄夫婦は「物理的な介護をしてくれているお前の負担を、お金で多少埋めたい」と言ってくれましたが、わたしは「お金で解決すると、こちらの気持ちが楽になりすぎて、後で問題が出る気がする」と感じていました。

最終的に「折半、ただしわたしの体調が崩れたら、兄が物理的な負担を増やす」というかたちに、落ち着きました。

項目7も、わたしが「自分の体調がいつ崩れるか分からない」と話し、兄夫婦が「いつでも預かるから、すぐ言って」と応じてくれました。

半日かけた価値は、本当に、ありました。

書面化の前に、準備したこと

書面化の話し合いの前に、わたしが準備したことを、3つお伝えします。

ひとつめ、ケアマネさんに「書面化したいけど、何を入れるべき?」と相談。 ケアマネさんが、項目案を、書面で渡してくれました。 これが、最終的な8項目の土台に、なりました。

ふたつめ、母の状態を、最新の数字で整理。 要介護度、年金額、介護保険の自己負担、利用しているサービスの一覧。 これを事前に紙にまとめて、話し合いの席に出しました。

みっつめ、兄夫婦に「事前に項目案を読んでおいて」とメール。 当日いきなり話し合いだと、兄夫婦も判断できません。 1週間前に、項目案を兄夫婦にメールで送って、考えてもらいました。

この事前準備で、当日の話し合いは、ずいぶん、スムーズに進みました。

半年に1回、書面を見直す

書面は、作って終わりでは、ありません。

わたしたちは、半年に1回、お盆と年末に、書面の見直しを、3人でしています。

見直しの内容は、こうです。

  • 母の状態の変化を、新しい数字に更新
  • 介護費用の自己負担額の変化を更新
  • 新しく出てきた問題への対応を追記
  • 物理的な介護の分担の見直し

これも、ケアマネさんが「半年に1回の見直しを、必ず」と勧めてくれました。

母の状態は、半年で変わります。 書面も、それに合わせて、変える必要があるのです。

やってよかったこと、もうひとつ

書面化と並行して、もうひとつ、やってよかったことがあります。

それは、母が元気な時期に、母自身に「介護に関する希望書」を書いてもらったことです。

A4の便箋1枚に、母が、自分の言葉で、こう書きました。

  • 自宅で過ごしたい
  • 施設なら、近所の〇〇会の施設がいい
  • 延命治療は、希望しない
  • 葬儀は、家族だけで、小さくしたい
  • お墓は、お父さんと同じ場所に

これがあるおかげで、わたしと兄は、いつでも、母の意思を確認できます。

母が認知症になっても、母が書いてくれた紙が、母の声を、ずっと残してくれます。

介護で揉めたくない方へ

もし、いま、親の介護がこれから始まる方が、兄弟との関係を心配しているなら、申し上げたいことがあります。

書面化を、必ず、最初にやってください。

口約束で始めると、半年で必ず、揉めごとが出ます。 わたしも、5年前の父の介護で、それを経験しました(別記事)。

書面化は、難しくありません。 ケアマネさんに「項目案をください」と頼めば、ほとんどの方が、雛形を出してくれます。 あとは、家族で、半日かけて、話し合うだけです。

そして、半年に1回、見直す。

これだけで、兄弟との関係を、介護のあいだも、ちゃんと保てます。

少なくとも、わたしと兄の関係は、2年間、書面のおかげで、安定しています。

これは、書面化前のわたしには、想像できなかったことでした。

なお、繰り返しになりますが、介護をめぐる家族の話し合いは、ご家庭ごとに事情が違います。具体的なやり方は、ケアマネジャーさんや、必要に応じて弁護士・行政書士などの専門家にご相談ください。

= 関連する夜話 =

介護

介護認定の更新と区分変更、わたしが申請した時の話

母の介護度が、進んだと感じたとき、わたしは、要介護度の区分変更を、申請しました。介護認定の更新と、区分変更の違い、申請の流れ、認定調査のポイント、結果が出るまでの期間を、65歳のわたしの体験と、公的な情報で、お伝えします。親の介護度の見直しを考える方へ。

#60代 #介護認定 #区分変更

介護

「施設は嫌」と言う88歳の母と、62歳の私

88歳の母は、ずっと「施設には行きたくない」と言い続けてきました。脳梗塞で半身が不自由になった去年の冬、私はとうとう、施設の見学に踏み切らなければならなくなりました。母の「嫌」と、私の「もう無理」と、その間で揺れた、62歳の半年の記録です。介護に直面している同世代の方に、ひとつの参考になればと思います。

#60代 #老人ホーム #介護

介護

親が入院した日、わたしの最初の3時間でやったこと

82歳の父が突然救急車で運ばれた日、わたしは病院に駆けつけた最初の3時間で、何をすべきか分からず混乱しました。あれから3年、当時を振り返って、もし今もう一度同じ場面に立つなら絶対にやる5つのこと、そしてやらないほうがよかった3つのことを記録します。親の急変が心配な60代の方に。

#60代 #親の入院 #急変対応