= COLUMN =
タイミーで働きはじめた64歳、最初の1週間の話
64歳のわたしが、スマホひとつで応募できるスキマバイトアプリ「タイミー」を始めてみた、最初の1週間の本当の話です。応募の指は震えたか、職場で60代は浮いたか、いくら稼げたか、夫に言ったか。年金にプラスしたい気持ちと、家にいるだけが少し怖くなった気持ちを、正直に書きました。
64歳になって、わたしはタイミーを始めました。
タイミーは、スマホで応募して、その日働けば、その日のうちに振り込まれる、スキマバイトのアプリです。若い人のものだと、ずっと思っていました。
でも、わたしは始めました。
きっかけは、ある朝、夫がゴルフに出かけたあと、ひとりでテレビを見ていて、ふと「今日も誰とも話さずに1日が終わる」と気づいたことでした。
年金は月14万円。生活はできますが、ぎりぎりです。それより、家にいるだけの自分が、少し怖くなったのです。
アプリを入れた日の、指の震え
最初の1週間の話を、正直に書きます。
アプリをインストールしたのは、月曜の朝でした。スマホの画面を見ながら、指が震えました。
会員登録に、本人確認の運転免許証の写真が必要でした。撮るのに10分かかりました。手が震えて、ピントが合わなかったのです。
それでも、なんとか登録は完了しました。
次は、求人を選ぶ画面です。
近所のスーパーの品出しが、9時から13時で、時給1,200円。4時間で4,800円です。 近所のホテルの朝食バイキングの片づけが、9時半から12時で、時給1,300円。 近所のお弁当工場のシール貼りが、10時から15時で、時給1,150円。
どれも、自宅から30分以内です。
「うちの近所にこんなに仕事があったのか」というのが、まず最初の驚きでした。
わたしは、いちばん緊張しなさそうな、お弁当工場のシール貼りを選びました。
応募ボタンを押すまでに、もう30分かかりました。
初日、緊張で前夜は眠れなかった
応募は通りました。3日後の水曜日の朝、行くことになりました。
火曜の夜、わたしは眠れませんでした。
40年ぶりの「他人の職場」だったのです。
最後に働いたのは、結婚前の25歳のときでした。それから、ずっと専業主婦でした。子育てが終わってからは、町内会の役員くらいしかしていません。
着る服に迷いました。タイミーのアプリには「動きやすい服装」と書いてあるだけです。ジーパンでいいのか、それともきれいめな格好か、わからなかったのです。
結局、紺色のTシャツに、紺色のチノパンにしました。一番、目立たなさそうな格好です。
朝、家を出るとき、夫はまだ寝ていました。わたしは、夫に言わずに、こっそり家を出ました。
なんだか、こそこそしているようで、自分でもおかしくなりました。
工場に着いて、最初に思ったこと
工場には、わたしを含めて、その日12人の人がいました。
驚いたのは、12人のうち、3人が60代以上の女性だったことです。
ひとりは見たところ、わたしと同じくらいの年齢の女性。もうひとりは、70歳近い感じの方。3人目は、60代前半に見えました。
工場長らしき若い男性が、簡単に説明してくれました。
「お弁当のフタに、シールを1枚ずつ貼っていただきます。難しくないので、隣の方に聞きながらやってください」
隣の席は、その60代前半に見える女性でした。
わたしが「初めてで、すみません」と言うと、その方はにっこり笑って、「わたしも先月始めたばっかりよ。お互いね」と言ってくれたのです。
その瞬間、ふっと、肩の力が抜けました。
シールを貼った5時間で、思ったこと
仕事は、本当にシール貼りだけでした。
お弁当のフタが、ベルトコンベアで流れてきます。それに、消費期限のシールを1枚ずつ貼って、また流す。それだけです。
最初の1時間は、緊張で疲れました。 2時間目は、指が痛くなりました。 3時間目には、シールを貼る手の動きが、自分でも信じられないくらいスムーズになっていました。
途中、15分の休憩がありました。
休憩室で、わたしと、隣の60代の方と、もうひとりの70歳近い方が、自然と一緒になりました。
3人で、コーヒーを飲みながら、こんな話をしました。
「年金だけだと、ちょっと寂しいわよね」 「家にいると、なんだかしぼんでくのよ」 「ここに来ると、誰かと話せるじゃない。それがいいの」
3人とも、同じだったのです。
お金がほしいだけじゃない。 誰かとちょっと話したい。 家以外に行く場所がほしい。
それが、わたしたちの本音でした。
その日もらったお金は、5,750円
15時に作業が終わって、その日のうちに、アプリ上で5,750円が振り込まれていました。
5時間で5,750円です。
20代の人から見たら、たいしたお金ではないかもしれません。でも、わたしには大きなお金でした。
家に帰ってから、夫に「今日、ちょっと働いてきた」と話しました。
夫は最初、「えっ?」と驚きましたが、わたしが説明すると、しばらく考えてから、こう言いました。
「いいんじゃないか。お前が楽しそうなら」
その夜、わたしは久しぶりに、よく眠れました。
その週、わたしは3回行った
翌日の木曜日、わたしはもう一度応募しました。今度は、別の場所のホテル朝食の片づけです。
これも、5時間で6,300円でした。
金曜は休みました。さすがに足が疲れたからです。
土曜日、もう一度、お弁当工場に行きました。同じ60代の方が、また隣の席で、にっこり笑ってくれました。
1週間で、3回。合計15時間で、17,800円稼ぎました。
月に4週続けたら、約7万円。年金14万円にプラスして、21万円になります。
家の電気代も、外食費も、孫へのお小遣いも、これでまかなえる計算です。
最初の1週間で、変わったこと
お金もうれしいのですが、もっと大きな変化がありました。
朝、目覚ましをかけて起きるようになったのです。
それまでは、夫が起きるまで、なんとなくダラダラと過ごしていました。タイミーで予定がある日は、6時に起きて、お化粧をして、髪をとかして、家を出ます。
その「家を出る」が、わたしには久しぶりの感覚でした。
夫の朝ごはんを出すために起きるのではなく、自分のために起きる。
64歳になって、これがどれほど大事だったか、わたしは初めて気づきました。
タイミーを始めるとき、わたしが知っておいてよかったこと
最後に、これから始めようか迷っている同世代の方に、わたしが1週間でわかったことを、いくつかお伝えします。
ひとつめは、初回は「立ち仕事5時間以下」を選ぶことです。慣れない場所で6時間以上立つのは、64歳の体にはきついです。
ふたつめは、最初は同じ職場に2、3回続けて行くこと。1回ごとに違う場所だと、緊張が抜けません。
みっつめは、応募の評価(レビュー)を必ず見ること。職場の雰囲気が、ほとんどそこに書いてあります。
よっつめは、夫や家族には、最初の1回が終わってから話すこと。事前に話すと止められることがあるそうです。わたしは結果的に事後報告で正解でした。
いつつめは、お金は、税金のことを忘れないこと。年間で20万円を超える収入があると、確定申告が必要になります。これはわたしも来年、確定申告に行く予定です。
さいごに
64歳。
年金だけでは少し足りない。家にいるだけでは、なんだかしぼむ。
そんな気持ちが、もしいまのあなたにもあるなら、タイミーを「見るだけ」でいいので、一度のぞいてみてほしいです。
応募ボタンを押す勇気は、64歳のわたしでも、本当に出にくかったです。
でも、押してみて、いまは始めてよかったと思っています。
家に閉じこもっていたわたしが、いまは週3日、家以外の場所に行っています。
それだけで、わたしの64歳は、ずいぶん変わりました。
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