相続放棄の3ヶ月、わたしが娘と作った週ごとのタイムライン
母の借金が見つかり、相続放棄を決めたわたしは、3ヶ月以内に手続きを終える必要がありました。65歳のわたしと、娘で、12週間のタイムラインをExcelで作り、毎週、何をするかを決めて進めました。週別の具体的なTo Do、必要書類、相談先、費用を、振り返って整理します。
去年の夏、わたしは、85歳で亡くなった母の財産整理を始めたとき、母の借金200万円を発見しました(別記事「相続放棄って何を失う?母の借金で悩んだ夏のこと」)。
法定の相続放棄期限は、3ヶ月。
母が亡くなったのは7月。 わたしが借金を発見したのが9月。
残された期限は、約2ヶ月でした。
慌てて手続きを進めようとしましたが、何から手を付けていいか、わかりませんでした。
そこで、娘(35歳)が、Excelで「相続放棄の12週間タイムライン」を、作ってくれました。
毎週、何をするかを、明確にして、ひとつずつ、こなしていく。
このタイムラインのおかげで、わたしと弟は、期限内に、無事に相続放棄を、完了できました。
今日は、その12週間のタイムラインを、振り返って、整理してお伝えします。
重要なお断り:この記事は、わたしの家族のケースです。相続放棄の手続きや必要書類は、ご家庭ごとに違います。具体的な手続きは、必ず弁護士、司法書士、または法テラスにご相談ください。
相続放棄の期限と、なぜタイムラインが必要か
まず、相続放棄の期限について、整理します。
公的な情報源では、こう案内されています。
相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。相続の放棄をする期間は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内である。
— 民法第915条 / 国税庁「相続税法における放棄の取扱」
「3か月以内」というのが、いちばんの制限です。
この3か月で、必要書類を集め、家庭裁判所に申述書を提出し、受理される必要があります。
ぼんやり進めていると、間に合いません。 タイムラインで管理することが、本当に大事です。
12週間のタイムライン全体像
娘と作ったタイムラインの、全体像は、こうでした。
| 週 | やること | 所要時間目安 |
|---|---|---|
| 1週目 | 専門家への相談、家族会議 | 半日 |
| 2週目 | 必要書類のリストアップ | 半日 |
| 3週目 | 戸籍謄本の取り寄せ | 半日 |
| 4週目 | 母の借金詳細の確認 | 半日 |
| 5週目 | 母の財産の最終確認 | 半日 |
| 6週目 | 兄弟間の最終合意 | 1日 |
| 7週目 | 申述書の作成 | 半日 |
| 8週目 | 申述書を家庭裁判所に提出 | 1日 |
| 9週目 | 家庭裁判所からの照会回答 | 半日 |
| 10週目 | 母の遺品の形見分け(放棄の影響なし範囲) | 1日 |
| 11週目 | 相続放棄申述受理通知書を受け取り | (待つだけ) |
| 12週目 | 関係先への連絡(債権者、銀行) | 半日 |
12週間で、ちょうど3ヶ月。 これが、わたしと弟の、相続放棄の実際のタイムラインでした。
1週目: 専門家への相談 + 家族会議
最初の1週間で、いちばん大事なのが、専門家への相談です。
わたしは、法テラスに電話して、無料の弁護士相談を予約しました。
法テラスでの初回相談(30分)で、こんなことを確認しました。
- 相続放棄が、わたしのケースで本当に適切か
- 必要な書類のリスト
- 申述書の書き方
- 兄弟間の調整の進め方
- 費用の目安
弁護士さんは、丁寧に、ぜんぶ教えてくれました。
そして、その日の夜、弟と私で、家族会議をしました。 弟も、すぐに「放棄に賛成」と決断してくれて、3兄妹で意見が一致しました。
これが、1週目です。
2週目: 必要書類のリストアップ
必要書類は、ケースによって違いますが、一般的にはこうです。
- 申述書(家庭裁判所の用紙、または自作)
- 申述人(私と弟)の戸籍謄本
- 被相続人(母)の住民票除票、または戸籍の附票
- 被相続人(母)の死亡記載のある戸籍謄本
- 収入印紙(800円分、申述人1人につき)
- 連絡用の郵便切手(裁判所による)
これらを、申述人(私と弟)それぞれが、用意する必要があります。
娘と一緒に、リストを作って、誰がいつまでに取り寄せるかを、決めました。
3週目: 戸籍謄本の取り寄せ
戸籍謄本は、本籍地の市区町村で取得します。
母は、結婚前は別の県に本籍があり、結婚後に転籍していました。 そのため、母の「出生から死亡までの戸籍」を、複数の自治体から、取り寄せる必要がありました。
これに、3週目を、まるまる、使いました。
便利だったのが、「広域交付制度」(2024年3月から始まった制度)です。 これを使うと、自分の本籍地以外の自治体の窓口でも、戸籍を取得できるようになりました。
公的な情報源では、こう案内されています。
戸籍法の一部改正により、令和6年3月1日から、本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍謄本などを請求できる「広域交付」が始まりました。
これを使えば、引っ越しなどで本籍が変わっている方も、近くの市区町村で、ぜんぶ取り寄せることができます。 所要時間は、1自治体あたり、約30分でした。
4週目: 母の借金の、詳細確認
借金の詳細は、母の通帳と、書類から、調べました。
具体的には、こんなものを確認しました。
- 母名義の借入契約書(消費者金融3社から)
- 母名義のカードローン(銀行カード1枚)
- 借入残高の最新確認(各社の窓口に電話で確認)
- 母名義の保証契約があるか(これが、後で大きな問題になることがあります)
母の場合、保証契約は、ありませんでした。 これは、本当に運がよかった、と感じます(保証契約があると、母が借りていなくても、相続人が肩代わりすることがあります)。
5週目: 母の財産の、最終確認
借金の確認と並行して、母の財産も、最終確認しました。
- 母名義の銀行口座の残高(最新)
- 母名義の保険(満期、解約価値)
- 母の不動産(実家の土地と建物の評価額)
- 母の遺品(時価で価値のあるもの)
母の財産の合計は、約500万円でした。 借金は、200万円。
差し引きすると、300万円のプラスでしたが、それでも、わたしと弟は、相続放棄を選びました。 理由は、実家の手放しの手間と、200万円という借金の「重さ」が、わたしたちの心に、しんどかったから、です。
6週目: 兄弟間の最終合意
弟と、もう一度、家で会って、最終合意を取りました。
A4の紙に、「わたしと弟は、ともに相続放棄をする」と書いて、お互いに署名しました。
これは、法的に拘束力があるものでは、ありません。 ですが、わたしたち兄妹の中で、「あとから揉めない」ためのメモとして、書きました。
7週目: 申述書の作成
申述書は、家庭裁判所のホームページから、書式をダウンロードできます。
書く内容は、以下です。
- 申述人(自分)の名前、生年月日、住所、職業
- 被相続人(母)の名前、生年月日、本籍、死亡日
- 法定相続人の関係(申述人と母の続柄)
- 相続放棄の理由
- 添付書類のリスト
「相続放棄の理由」は、シンプルに「相続財産より相続債務のほうが上回るため」と書きました。
書式は、A4で2枚ほどです。
8週目: 申述書を家庭裁判所に提出
申述書は、被相続人(母)の最後の住所地の家庭裁判所に、提出します。
わたしは、母の住所地の家庭裁判所に、直接、申述書を提出に行きました。 弟は、郵送で、提出しました。
窓口の方が、書類のチェックをしてくれて、「不備があったら、後で連絡します」と言ってくれました。
費用は、収入印紙800円と、郵便切手数百円。 合計で、約1,500円ほどでした。
9週目: 家庭裁判所からの照会回答
申述書を提出した後、家庭裁判所から、A4で2枚の「照会書」が、自宅に届きました。
質問内容は、こんなものでした。
- 被相続人(母)の死亡を知った日
- 相続財産を、すでに処分したかどうか
- 相続放棄に至った経緯
- 他の相続人の状況
これらに、ペンで回答して、家庭裁判所に返送しました。
これも、半日で済みました。
10週目: 母の遺品の形見分け
相続放棄が確定する前に、母の遺品の「形見分け」をしました。
別記事(相続放棄って何を失う?)に書いたように、形見分けは、慎重に進める必要があります。
価値のある遺品(宝石、預貯金など)を持ち帰ると、相続放棄が、無効になることがあるからです。
わたしは、弁護士さんに事前に確認した上で、価値が極めて少ない、母の思い出の品だけを、持ち帰りました。
- 母の手作りのクリスマスツリー
- 母のアルバム
- 母が編んだセーター3着
- 母の振袖
これらは、価値が、ほぼ0円のもの、と弁護士さんが確認してくれました。
11週目: 相続放棄申述受理通知書
申述書提出から、約3週間後、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が、届きました。
これが届くと、わたしの相続放棄は、法的に確定しました。
これで、母の借金200万円も、わたしの責任ではなくなりました。
12週目: 関係先への連絡
最後に、母の借金の債権者(消費者金融3社、銀行1社)に、相続放棄申述受理通知書のコピーを、送りました。
これで、債権者からの請求が、止まります。
母の銀行口座も、同じ通知書のコピーを送って、口座の閉鎖手続きを、お願いしました。
これで、12週間の、相続放棄の手続きが、ぜんぶ、完了しました。
全体でかかった費用
12週間で、かかった費用を、まとめます。
- 法テラスの初回相談: 無料
- 戸籍謄本(被相続人1人分): 約3,000円
- 戸籍謄本(申述人1人分): 約1,000円
- 収入印紙: 800円
- 郵便切手: 600円
- 申述書のコピー代: 300円
- 関係先への通知のコピー代と郵送代: 2,000円
合計で、約7,700円。
これに加えて、相続放棄手続きを、司法書士さんに依頼した場合は、5万円〜15万円が目安と言われています。
わたしは、娘の助けがあって、自分でできたので、司法書士費用は、かかりませんでした。
自分でできるか、専門家に頼むか
最後に、相続放棄を、自分でやるか、司法書士に頼むか、の判断について。
自分でできるケース:
- 相続関係が単純(配偶者+子のみ)
- ご家庭内で、相続放棄に反対する人がいない
- 戸籍の取り寄せが、自分でできる
- A4の申述書の作成と、家庭裁判所への提出ができる
司法書士に頼むべきケース:
- 相続関係が複雑(代襲相続、再婚など)
- 期限がもう1ヶ月以下に迫っている
- 兄弟間で意見が割れている
- 戸籍の取り寄せが、複雑(複数の県、海外など)
わたしの場合は、「自分でできる」ケースでした。 娘の助けがあったから、できた、というのも、大きいです。
さいごに
相続放棄の3ヶ月は、本当に、慌ただしい時間です。
ですが、12週間のタイムラインで、毎週「今週は何をするか」を明確にしておけば、期限内に、確実に、終わらせることができます。
これを読んでくださっている方が、もし将来、相続放棄に直面したとき、この記事のタイムラインを、参考にしてもらえれば、本当に、うれしいです。
母の借金で悩んだ夏から、約1年。
いま、わたしは、母の遺品(価値の少ない思い出の品)に囲まれて、母を、ふんわりと、思い出しています。
借金は、もう、わたしの肩には、ありません。
なお、繰り返しになりますが、相続放棄の手続きや必要書類は、ケースによって違います。具体的な進め方は、必ず弁護士、司法書士、または法テラスにご相談のうえで、進めてください。
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