= COLUMN =
友人のお母様の介護を、わたしが手伝った6ヶ月の話
65歳のわたしの古い友人、由美子さんが、87歳のお母様の介護で、本当に疲れていました。わたしは、半年間、月に2回、由美子さんのお母様の家事を、手伝いに、行きました。家族でないわたしが、友人の親の介護を、どう手伝ったか、どこまで関わったか、6ヶ月の記録です。
65歳のわたしの、古い友人、由美子さん。
別記事(60代の旅で、ふっと思い出した3つの古い友達の話)に書いた、わたしが大学時代の親友のひとりに、手紙を出して、40年ぶりに、再会した、純子さんとは、別の方です。
(60代以降、「由美子さん」というお名前の方が、本当に、多くて、別の記事でも、書いています。みなさん、別人です)
去年の春、由美子さんから、ふっと、こんな電話が、ありました。
「真奈美さん、聞いてくれる? わたし、本当に、疲れちゃって」
由美子さんは、87歳のお母様の介護で、半年、ほとんど眠れていない、と話してくれました。
由美子さんのご主人は、3年前に他界。 ご兄弟は、遠方で、頻繁には来られない。 お子さんは、独立して、関東に住んでいる。
由美子さんは、半年前から、ひとりで、お母様の介護を、抱えていたのです。
電話で、由美子さんの声を、聞いて、わたしは、すぐに、こう、答えました。
「由美子さん、わたし、月に2回、お母様のところに、伺うね」
家族でない、わたしが、友人のお母様の介護を、手伝う。
半年、続けました。
今日は、その6ヶ月の、わたしの経験を、お伝えします。
由美子さんが、疲れていた理由
最初に、由美子さんの状況を、整理します。
由美子さんのお母様(87歳)は、軽い認知症と、足の関節の痛みで、ひとりでの生活が、難しくなって、いました。
訪問介護を、週3回、利用していましたが、それでも、由美子さんが、週2回、お母様のところに、通って、家事と、買い物を、手伝う必要が、ありました。
由美子さんは、ご自身も、65歳。 脚の悪い時期もあり、お母様のところまで、車で、片道40分の移動が、体に、こたえていました。
そして、ひとりで介護を、抱えていることが、心を、ぐっと、削っていました。
「真奈美さん、わたし、ひとりで、こんなにしんどい思いを、するなんて、思わなかったの」
電話の声は、本当に、疲れていました。
わたしが、手伝うと、決めた理由
わたしは、家族では、ありません。 血のつながりも、ありません。
それでも、由美子さんを、手伝うと、決めた理由は、3つでした。
理由① 由美子さんと、わたしは、40年の友人
由美子さんとは、20代の職場で、出会いました。 40年、年賀状と、たまの電話で、つながり続けてきた、本当の親友です。
その友人が、こんなに、疲れている。 何か、わたしに、できることが、あるなら、と、思いました。
理由② わたし自身も、母の介護を、経験中
別記事(介護保険の限度額、わたしが計算した家計の現実)に書いた、わたし自身の母の介護を、3年、続けています。
介護のしんどさを、わたしも、知っていました。 そのしんどさを、知っているからこそ、由美子さんに、寄り添いたいと、感じました。
理由③ ひとりの介護は、絶対に、いけない
わたしは、3年、母の介護を続けて、確信していました。
ひとりの介護は、必ず、心と体を、壊します。
由美子さんを、ひとりに、しておいては、いけない、と、強く、感じました。
月に2回、何をしたか
月に2回、わたしは、由美子さんのお母様のところに、伺いました。
具体的に、何をしたか、お伝えします。
訪問のスケジュール
- 月の第2土曜日、午前10時から、午後2時まで
- 月の第4水曜日、午前10時から、午後2時まで
- 合計、月8時間
お母様のところで、わたしがしたこと
- 掃除: リビング、トイレ、お風呂を、軽く
- 買い物: お母様の好きなもの、必要なものを、近所のスーパーで購入
- 料理: お昼ご飯を、お母様と一緒に作って、いただく
- お話相手: お昼ご飯のあと、お母様と、1時間、お話する
- 家計簿: 由美子さんから預かった、月の家計簿を、ひと通り、確認
これだけです。
お母様との関係
お母様は、最初、わたしのことを、警戒されていました。
「あら、どなた」と、毎回、何度も、聞いてこられました。
ですが、3回目から、わたしのことを、「由美子のお友達のお姉さん」と、呼んでくれるように、なりました。
お母様にとって、わたしは「由美子の友達」、それで、十分、信頼してくださいました。
「やりすぎない」を、徹底した
家族ではない、わたしが、友人のお母様を、手伝うときに、徹底したことが、ひとつあります。
それは「やりすぎないこと」、です。
やらなかったこと
- お母様の体に、直接、触れる介助(着替え、トイレ、お風呂)
- お母様の医療に、関わる判断
- お母様のお金を、直接、預かったり、引き出したりすること
- お母様の重要な書類(年金、保険、相続関連)を、見ること
- 由美子さんに、無断で、お母様の生活に、踏み込むこと
これらは、家族でない、わたしの役割では、ありません。
訪問介護の方や、由美子さんに、必ず、お任せしました。
やったこと
- 掃除、買い物、料理、家計簿の、生活支援
- お母様の「お話相手」
これだけに、絞りました。
「お話相手」が、お母様には、いちばん、ありがたかった、と、由美子さんは、教えてくれました。
由美子さんは、お母様の介護の細かい用事で、ゆっくり、お話する時間が、なかった、とのこと。
わたしが、月に2回、お母様と、1時間、ゆっくり、お話するだけで、お母様の表情が、毎回、ぐっと、温かくなりました。
半年で、由美子さんに、起きた変化
半年、わたしが、月に2回、訪問を続けて、由美子さんに、起きた変化を、整理します。
変化① 夜、眠れるように、なった
半年前の由美子さんは、ほとんど、眠れていませんでした。
ですが、わたしが、月2回、訪問を始めて、3ヶ月で、由美子さんが、こう、報告してくれました。
「真奈美さん、わたし、最近、夜、5時間、続けて、眠れるように、なったの」
「真奈美さんが、月に2回、お母さんのところに、行ってくれることで、わたしの心の中の『お母さんのこと』が、少し、軽くなったの」
変化② 介護の判断が、整い始めた
由美子さんは、ひとりで、介護の判断を、抱えていました。
ケアマネさんとの相談、医師との相談、家族との相談、ぜんぶ、由美子さん、ひとり。
わたしが、月2回、訪問するときに、ふたりで、これらの判断を、ゆっくり、話し合うように、なりました。
わたしは、由美子さんの「判断の代行」は、しません。 ですが、「相談相手」には、なれます。
由美子さんが、わたしと話すことで、頭の中の混乱が、整理されて、判断が、明確に、なっていきました。
変化③ 由美子さん自身の、心が、温かくなった
「ひとりで、お母さんの介護を、している」と、強く、感じていた由美子さんが、半年で、変わりました。
「真奈美さんが、月に2回、来てくれる。それだけで、わたしは、ひとりじゃ、ない、と、思える」
これが、由美子さんに、起きた、いちばん深い、変化でした。
半年後、わたしと由美子さんの、いま
半年後、お母様の状態が、悪化して、グループホームに、入居されることに、なりました。
由美子さんは、月に2回、グループホームに、面会に、行っています。 わたしは、月に1回、由美子さんに、ショートメールで、近況を、聞く、関係に、戻りました。
由美子さんから、最近、こんなメッセージが、来ました。
「真奈美さん。あの半年、本当に、ありがとう。あなたが、いなかったら、わたし、たぶん、壊れてた」
わたしは、こう、返しました。
「由美子さん、こちらこそ、お母様と、お会いできて、わたしも、本当に、温かい時間でした」
これは、本当の気持ちでした。
友人の介護を、手伝うときの、3つの心得
家族ではない、友人として、誰かの介護を、手伝うときの、3つの心得を、お伝えします。
ひとつめ: 「やりすぎない」を、徹底する
家族にしか、できないこと(体の介助、医療判断、お金の扱い)には、関わらない。
掃除、買い物、料理、お話相手、これだけに、絞る。
これで、友人の負担を、減らしながら、家族の領域を、侵害しない。
ふたつめ: 「お話相手」を、何より、大事にする
ご本人(介護されている方)にとって、家族以外の「お話相手」は、本当に、貴重です。
家族との会話は、どうしても、家のことや、介護のこと、になりがち。
友人として、ご本人の若い頃の話、好きなテレビ番組の話、近所の話、軽い話を、ゆっくり聞く。
これだけで、ご本人の心が、ぐっと、明るくなります。
みっつめ: 「友人の心の支え」になることを、第一の目的にする
ご本人の介護を、手伝うこと以上に、友人(介護されている娘さん)の心を、支えることが、いちばんの目的です。
友人が「ひとりじゃない」と感じてくれること。 友人が、夜、ちゃんと、眠れること。 友人が、判断を、整理して、進められること。
これらが、友人を、ぐっと、支えてくれます。
同じ立場で、迷っている方へ
もし、いま、ご友人が、ご家族の介護で、疲れているのを、知っている方が、いらっしゃるなら、申し上げたいことが、ひとつあります。
家族ではない、あなたでも、手伝えることが、あります。
月に1回、または、月に2回、ご友人のお母様、お父様のところに、伺ってみてください。
掃除、買い物、料理、お話相手。
これだけで、ご友人は、本当に、本当に、ホッと、します。
そして、ご本人(介護されている方)も、家族以外の「お話相手」を、本当に、楽しみに、してくれます。
ただし、家族にしか、できないことには、関わらないでください。 医療、お金、重要書類、体の介助、これらは、ご家族と、専門職に、お任せしてください。
その「ちょうどよい距離」で、半年、月に1〜2回、続ける。
これだけで、ご友人の人生を、深く、支えることが、できます。
少なくとも、わたしと由美子さんの場合は、できました。
なお、ご友人の介護を手伝う関わり方は、ご家族の状況やご本人の様子で大きく違います。ご友人と相談しながら、無理ない範囲で、進めてください。
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