= COLUMN =
離婚届を書いた夜、わたしが出さなかった理由
62歳の冬、わたしは離婚届に自分の名前を書きました。長年積もった夫への気持ちが、あふれた夜。けれど、その紙は今も、たんすの引き出しにあります。出さなかった理由と、それから3年の夫婦の変化を、65歳のわたしがゆっくりお伝えします。夫婦の岐路に立つ方へ。
わたしの、たんすの、いちばん下の、引き出しに、一枚の、紙が、入っています。
離婚届です。
わたしの、名前だけが、書いてある。
62歳の、冬に、書いたものです。
けれど、その紙は、3年経った今も、出されないまま、引き出しの、奥に、眠っています。
今日は、その、離婚届を、書いた夜と、出さなかった理由の話を、お伝えします。
なお、これは、わたし個人の、体験です。夫婦のことは、ご家庭ごとに、本当に違います。あくまで、ひとつの話として、お読みください。
積もりに、積もった夜
あの夜のことは、今でも、よく、覚えています。
きっかけは、ほんの、小さなことでした。
わたしが、風邪で、寝込んでいたのに、夫は、「メシは?」と、言ったのです。
熱を、出して、寝ている、妻に、ごはんの、心配。
その、ひとことで、長年、積もっていたものが、あふれました。
子育ても、親の介護も、家のことも、ぜんぶ、わたし任せ。
「ありがとう」の、ひとことも、ない。
そういう、40年分の、思いが、いっぺんに、噴き出したのです。
わたしは、その夜、市役所で、もらっておいた、離婚届を、取り出して、自分の名前を、書きました。
手が、震えて、いました。
でも、書き終えたとき、不思議と、心は、静かでした。
出そうと、思えば、出せた
名前を、書いた、離婚届を、前に、わたしは、考えました。
これを、出したら、どうなるか。
夫は、おどろくだろう。 子どもたちも、おどろくだろう。 それから、わたしは、ひとりに、なる。
別記事(熟年離婚を真剣に考えて、3年かけてやめた話)を、書いた方のように、わたしも、何度も、何度も、考えました。
出そうと、思えば、出せる。
あとは、判を、押して、市役所に、持っていくだけ。
けれど、わたしは、その夜、出しませんでした。
出さなかった、理由
なぜ、出さなかったのか。
こわかったから、では、ありません。
書き終えて、静かになった、頭で、考えたとき、気づいたことが、あったのです。
わたしが、本当に、ほしいのは、離婚では、ないのかもしれない。
わたしが、ほしかったのは、「ありがとう」の、ひとこと。
わたしを、家政婦では、なく、ひとりの、人間として、見てほしい。
ただ、それだけ、だったのかもしれない。
離婚は、その手段の、ひとつでは、あるけれど、唯一の、道では、ない。
そう、思ったとき、わたしは、離婚届を、引き出しに、しまいました。
「捨てる」のでは、なく、「しまう」。
そこに、わたしの、答えが、ありました。
引き出しの、離婚届は、お守り
それから、わたしは、少しずつ、夫に、伝えることに、しました。
「わたしは、家政婦じゃ、ないのよ」 「『ありがとう』って、言ってほしいの」
別記事(『もう一緒に暮らせない』を夫に伝えた60代妻の一言と準備)に書かれているように、気持ちを、言葉にして、伝えるのは、勇気が、いります。
でも、引き出しに、離婚届が、あると思うと、不思議と、言えました。
「いざとなったら、わたしには、あの紙が、ある」
そう思うと、夫に、遠慮なく、本音が、言えたのです。
離婚届は、いつのまにか、わたしの、お守りに、なっていました。
3年経って、変わったこと
あれから、3年。
夫は、少しずつ、変わりました。
「メシは?」が、「今日は、俺が、買ってくるよ」に、なった日。
ぶっきらぼうに、「ありがとな」と、言った日。
もちろん、急に、別人には、なりません。
言っても、伝わらない日も、たくさん、あります。
それでも、わたしが、本音を、言えるように、なってから、夫婦の、空気は、確かに、変わりました。
別記事(熟年離婚して後悔する人、しない人の違い)にも、あるように、大切なのは、自分で、納得して、選ぶこと。
わたしは、「出さない」ことを、自分で、選びました。
だから、後悔は、していません。
引き出しの紙が、教えてくれたこと
今も、たんすの、引き出しには、あの、離婚届が、あります。
ときどき、思い出しては、そっと、引き出しを、開けることが、あります。
あの紙は、わたしに、教えてくれます。
わたしは、我慢して、ここに、いるのでは、ない。
自分で、選んで、ここに、いるのだ、と。
その違いは、とても、大きいのです。
同じ、毎日でも、「選んで、いる」と思えると、心は、ずっと、軽くなります。
さいごに
62歳の冬、わたしは、離婚届に、名前を、書きました。
けれど、出しませんでした。
わたしが、本当に、ほしかったのは、離婚では、なく、ひとりの、人間として、大切に、されること、だったからです。
引き出しの、離婚届は、今では、わたしの、お守りです。
「いざとなったら、選べる」と思えることが、わたしに、本音を、言う勇気を、くれました。
今、夫婦の、岐路に、立っている方が、いたら。
出すことも、出さないことも、どちらも、あなたが、選んで、いいのです。
大切なのは、我慢では、なく、自分で、選ぶこと。
あなたが、納得できる道が、見つかりますように。
熟年離婚の、全体像を、知りたい方は、別記事(熟年離婚を考えはじめた50〜60代妻の完全ガイド)も、あわせて、ご覧ください。
なお、夫婦・家族の選択は、ご家庭ごとに本当に違います。離婚の手続きや、お金のことは、必ず、弁護士などの、専門家に、ご相談ください。
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