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コラム

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熟年離婚を真剣に考えて、3年かけてやめた話

| ヨバナシ編集部 | 読了 約7分

60歳のとき、わたしは本気で熟年離婚を考えました。離婚相談所に2回行き、年金分割の試算もしました。それから3年。わたしはいま、夫と同じ家で暮らしています。離婚を決めなかった理由と、その代わりに3年で夫婦の何を変えたか、63歳のいま、振り返って書きます。

60歳のとき、わたしは本気で熟年離婚を考えました。

35年連れ添った夫との生活が、これから20年、25年と続くと思うと、息が詰まる気がしたのです。

夫が悪い人だったわけでは、ありません。 DVもなければ、浮気もなかった。 お金にもまじめで、定年退職金もちゃんと残してくれていた。

でも、夫と一緒の食卓に座ると、わたしは、いつも、心がしぼむのです。

それから3年。

わたしはいま、63歳。 そして、夫と同じ家で、暮らしています。

離婚は、しませんでした。

この3年で、わたしは何を考えて、何をやって、なぜ離婚をしなかったか。

同じように熟年離婚を考えている方に、ひとつの記録としてお伝えします。

60歳、わたしが熟年離婚を考えた理由

60歳のわたしが、熟年離婚を考えた理由を、正直に書きます。

ひとつめは、夫の「無言」がつらかったこと。 夫は、もともと無口な人です。それは結婚前から知っていました。ですが、子どもが独立してから、家のなかで夫と私の二人きりになった時間が増え、夫の「無言」が、本当に重く感じるようになりました。

ふたつめは、夫が家事を「ぜんぜん」やらなかったこと。 わたしも仕事(パート)をしていて、家事も全部わたしでした。「やってよ」と言うのに、勇気がいる夫でした。

みっつめは、わたしの「これからの20年」が見えなかったこと。 60歳。あと20年か、25年は、生きるかもしれない。その時間を、ぜんぶ、いまの夫と過ごす、と考えると、ふいに、息が詰まりました。

夫を嫌いになったわけではないのです。 ただ、「夫と一緒の未来」が、わたしには想像できなかった。

離婚相談所に行った2回

考えだけで終わらず、わたしは離婚相談所に、2回行きました。

1回目は、駅前の弁護士事務所が運営する離婚相談所。 2回目は、女性専門の離婚カウンセリング。

両方とも、初回相談は無料で、1時間ほど話を聞いてくれました。

そこで、わたしは、はっきり知りました。

熟年離婚は、お金の面では、思っていたよりずっと「現実的」だということ。

公的な情報源には、こう書かれています。

婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録を、当事者間で分割することができる制度(合意分割又は3号分割)

— 日本年金機構「離婚時の年金分割」

年金分割は、ちゃんと、わたしの権利として、認められていました。

夫のサラリーマン時代の厚生年金の半分を、わたしも受け取れる試算でした。

これに、わたしの分のパート時代の年金を足すと、月10万円弱。

家賃の安いアパートで、ひとり暮らしをするなら、生きていける金額でした。

数字の面では、離婚は、可能でした。

3つの「もう一度考えた」

ただ、相談所からの帰り道、わたしは、3つのことを「もう一度考えました」。

ひとつめ、夫と離れたい理由は、本当に「離婚」なのか? わたしが息が詰まるのは、「夫と一緒にいる時間が長すぎる」からかもしれない。 それなら、「離婚」ではなく、「一緒にいる時間を減らす工夫」でも、解決するかもしれない。

ふたつめ、月10万円のひとり暮らしは、いまの何より「自由」と言えるのか? 家賃、光熱費、食費、医療費、すべてを月10万円でやりくりするのは、相当きつい。 お金の心配がない自由と、夫と離れた孤独な自由、どちらが、わたしの本当の幸せか。

みっつめ、夫はわたしが本当に離婚を考えていることを、知っているのか? わたしは、自分で考えて、自分で相談所に行って、自分で結論を出そうとしていた。 夫には、何も話していなかった。 もしかしたら、話してみると、夫の側からの何か答えがあるかもしれない。

この3つを、わたしは2週間、夜のお風呂で、毎晩考えました。

夫に「離婚を考えていた」と伝えた夜

考え抜いた末、わたしは、夫に伝えました。

ある日曜日の夜、夕食のあと、お茶を入れて、こう切り出しました。

「あなた、わたし、最近、本当は離婚を考えていたの」

夫は、お茶のカップを置いて、しばらく、わたしの顔を見ていました。

そして、こう言いました。

「うん、なんとなくは、感じてた」

え、と、わたしは驚きました。

夫は、わたしの様子を、ちゃんと見ていたのです。

「なんで、言ってくれなかったんだ」

夫は、それから1時間、わたしの話を聞いてくれました。

35年連れ添って、夫がわたしの話を1時間聞いてくれたのは、たぶん、初めてでした。

わたしと夫が、その夜に決めた「3つの実験」

その夜、わたしと夫で、3つの「実験」を始める、と決めました。

ひとつめ、夫が、家事を3つ、必ず引き受ける。 具体的には、毎朝のゴミ出し、週末の洗濯物の取り込み、月1回の冷蔵庫の掃除。これだけです。

ふたつめ、わたしが、月に2日、家を出る。 土曜の朝に家を出て、日曜の夜に帰ってくる。実家(母のところ)に泊まる、女友達と温泉に行く、ひとりでビジネスホテルに泊まる、何でもいい。「ひとりで過ごす時間」を、月に2日、確保する。

みっつめ、毎週日曜の夜、夫婦で30分、話す時間を持つ。 何を話してもいい。1週間の出来事、最近気になっていること、相手にお願いしたいこと。ただ、月1回は「相手にちょっと不満なところ」を、必ずひとつだけ言う。

この3つを、半年続けてみる。 半年経って、わたしがまだ離婚したい、と思っていたら、その時はもう一度ちゃんと話し合う。

そう約束しました。

半年後、わたしの気持ち

半年後、わたしの気持ちは、はっきり変わっていました。

「離婚したい」と、思わなくなっていたのです。

何が、変えたのか。

ひとつめは、夫が家事を3つだけでもやってくれたこと。 特に「ゴミ出しを夫がやる」は、わたしの中で大きな変化でした。「ゴミ出しを忘れない夫」を見るたびに、夫が「わたしに頼まれた約束を、守ってくれている」のを感じました。

ふたつめは、月に2日の「ひとりの時間」が、思った以上に効いたこと。 月に2日だけでも、家を出てひとりで過ごす時間があると、それ以外の28日が、ぐっと耐えやすくなりました。「逃げ場がある」と分かるだけで、心の重さが半分以下になりました。

みっつめは、日曜の夜30分の話し合いが、35年で初めて「夫と本音で話す時間」になったこと。 最初の3週間は、お互いに何を話していいか分からず、沈黙が多かったです。1ヶ月過ぎたあたりから、自然と話せるようになりました。3ヶ月過ぎた頃には、夫が「俺、最近こんなこと考えてるんだけど」と、自分から話してくれるようになりました。

35年の重さは、半年で完全に消えたわけでは、ありません。 ですが、半年で「離婚を考えるほどの息苦しさ」は、消えたのです。

3年経って、わたしと夫の「いま」

それから3年。

わたしは63歳、夫は66歳になりました。

3つの実験は、いまも続いています。

夫の家事は、3つから5つに増えました(夫が自分で増やしました)。 わたしの「ひとり時間」は、月2日のまま、続いています。 日曜の30分の話し合いは、いまも、毎週、続いています。

そして、わたしと夫は、いま、35年の中で、いちばん近い距離にいる、と感じます。

「ラブラブの夫婦」というわけでは、ありません。 若い頃のような恋愛感情も、ありません。

ただ、「相手のことを、知っている」「相手のことを、尊重している」、その関係が、35年で初めて、わたしと夫の間にできたのです。

「熟年離婚を考えた」ことが、変えてくれたもの

3年経って、わたしが思うのは、こうです。

「熟年離婚を真剣に考えた」ことが、わたしの結婚生活を、最終的に救ってくれた。

考えなかったら、わたしは、夫に何も言わずに、不満を抱えたまま、20年を過ごしていました。

考えたから、相談所に行き、年金を試算し、夫に話す勇気が出ました。

考えたから、夫もわたしも「やり直す」という選択肢を、真剣に検討できたのです。

「熟年離婚を考える」のは、悪いことでは、ありません。 むしろ、夫婦の関係を、最後にもう一度、本気で考え直すきっかけになるのです。

いま、熟年離婚を考えている方へ

もし、いま、熟年離婚を真剣に考えている方がいらっしゃるなら、申し上げたいことが、3つあります。

ひとつめ、考えることは、止めなくていいです。 真剣に考える、相談所に行く、年金を試算する、これは全部、悪いことではありません。

ふたつめ、夫に「考えていること」を、伝えてみてください。 夫の反応で、夫婦の未来が見えます。話さない夫、向き合わない夫、話し合いを拒否する夫なら、離婚は正しい選択かもしれません。話を聞いてくれる夫、変わろうとする夫なら、3年で関係が変わる可能性が、十分にあります。

みっつめ、いきなり離婚を決めず、半年だけ「実験期間」を取ってみてください。 わたしのように、夫に3つだけ家事を頼む、自分が月2日ひとりになる、週1回30分話す、こういう小さな実験を半年。それでも変わらなければ、その時に離婚を決めても、遅くはありません。

熟年離婚を考えるあなたの気持ちは、本物です。 ですが、その先に、もしかしたら「離婚せずに、夫婦をやり直す」という道も、あるかもしれません。

両方を、ちゃんと、考えてみてほしいのです。

3年前のわたしのように。

なお、年金分割や離婚の手続き、財産分与については、地域や個別の状況によって大きく異なります。実際の手続きは、必ず弁護士、社会保険労務士、または法テラスなど専門の方にご相談ください。

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