ヨバナシ —女たちの秘密会議
コラム

= COLUMN =

母の日の翌朝、息子から1通も来ていなかったこと

ヨバナシ編集部 読了 約5分

昨日5月11日が母の日でした。娘からはカーネーションが届きました。息子2人からは、1通も連絡がありませんでした。月曜の朝、コーヒーを淹れながら気づいた、64歳の私の小さな発見と、そのあと自分から送った1通のLINEの話。

昨日が母の日でした。

朝9時に、娘からカーネーションが届きました。3年連続、同じ花屋さんから、同じピンク色のカーネーション。今年は手書きのメッセージが添えてあって、「お母さん、夫の人間ドックが終わったよ、A判定だった」と書いてありました。

私は、その紙片を3回読みました。

娘の手紙は、いつも私の知りたいことを、書いてくれます。

息子からは、何も届きませんでした。

息子は2人います。31歳と28歳。2人とも独立して、それぞれの暮らしをしています。

8時から夜の11時まで、私はスマホをときどき見ていました。LINEに、何もきません。電話もありません。

寝る前に、私は、自分が何を期待していたのか、考えました。

日曜の夜

月曜の朝、コーヒーを淹れながら

今朝、月曜です。

コーヒーを淹れていて、ふと思い出したことがあります。

私が30代の頃、私の母に、母の日にカーネーションを送っていたか。

考えて、答えが出ました。

送っていません

母の日の前後に、私が母に何かをした記憶が、ほとんどないのです。子育てに必死で、自分の母のことまで気が回らなかった。母の日は「自分が娘からカーネーションをもらう日」だと、なんとなく思っていた気がします。

母から何か言われたかというと、何も言われなかった。母は何も求めなかった。少なくとも、私の前では。

64歳になって、初めて気づきました。

たぶん、母も、ちょっと寂しかったのです。

それを言わないでいてくれた、ということです。

友人からのLINE

朝、ご近所の友人からLINEが来ました。

「うちの息子、今年も豪華な花とケーキを送ってきたよ」

写真がついていました。確かに豪華な花束です。

私は「素敵ね」と返しました。

返した後、自分の中に、はっきりした嫉妬と、それを上回るくらい大きな恥ずかしさが、混ざって浮かびました。

息子からカーネーションがこなかった、というだけのことを、人と比べて気にしている自分。

64年生きてきて、64歳の朝に、まだこんなことで揺れるのか。

恥ずかしさは、嫉妬よりも、たぶん体にこたえます。

コーヒーの湯気

息子の名誉のために

息子2人の名誉のために、書いておかなければいけないことがあります。

息子たちは、私のことを忘れているわけではありません。

下の息子は、3月の私の誕生日に、宅配便で日本酒を送ってくれました。私は飲まないので父にあげましたが、メモには「お母さん、いつもありがとう」と書いてありました。

上の息子は、年末年始は必ず家に帰ってきて、3泊4日、私の作るすき焼きを食べていきます。

ただ、息子たちは「母の日」というイベントを、ちゃんと認識していないのだと思います。

「母の日」「父の日」「敬老の日」「クリスマス」「誕生日」。世の中には、家族にちなんだイベントが多すぎる。息子たちはそれを全部、覚えていられない。

それは、息子の責任ではなくて、世の中の責任です。

たぶん。

寝る前に、自分から1通

寝る前に、私は息子たちに、LINEを送ることにしました。

「元気にしてる?」

たった、それだけです。

「昨日は母の日でしたよ」とは、書きませんでした。「カーネーションは要らないからね」とも書きませんでした。

書いてしまったら、それは催促か、皮肉になります。私が本当に欲しいのは、贈り物ではなくて、ちょっとしたやり取りでした。

下の息子から、11時半に返信が来ました。

「元気だよ。お母さんは?」

上の息子からは、今朝の8時に返信が来ました。

「元気。仕事忙しい。母さんも風邪ひかないでね」

それで、十分でした。

母の日のカーネーションは、もう要らないのかもしれません。

「元気にしてる?」「元気だよ」のやり取りのほうが、64歳の私には、ずっと栄養になります。

64歳の母の日明け、わかったこと

母の日に贈り物がこないことで、夜、少しだけ揺れました。

揺れたことを、隠さずに書いておきます。

書いた上で、整理して、わかったことが3つあります。

1つ目。贈り物は、母の日の本質ではありません

2つ目。息子と娘では、母の日への反応が違うのが、普通です。比べると、嫉妬が湧きます。私は今日、それを学びました。

3つ目。息子から贈り物がこない年は、自分から「元気にしてる?」と送ればいいのです。それで何か関係が悪くなる、なんてことはありません。

来年の母の日は、5月10日です。

たぶん、今年と同じように、娘からはカーネーションが届きます。息子からは何も来ないかもしれません。

そうしたら、私はまた、夜に、自分から「元気にしてる?」と送ります。

それが、私の新しい母の日の過ごし方になりそうです。

64歳になって、ようやく、自分から動くことを覚えました。

母の日に、母にカーネーションを送らなかった30代の自分のぶんも、いま、息子たちに「元気にしてる?」と送っている気がします。

朝の光と紅茶

同じように、夜に揺れた方へ

もし、昨日の母の日に、息子さんや娘さんから連絡がなくて、夜にちょっと寂しい思いをした方がいたら。

「贈り物がほしかったわけじゃない」のだと、たぶん思います。

ほしかったのは、贈り物の形をしていない、何かです。

その「何か」は、自分から動くと、わりと簡単に手に入ります。

LINEで「元気にしてる?」と1行送るだけ。それだけで、夜は短くなります。

来年の母の日のために、今夜、それを試してみてください。


60代から始める『自分時間』の完全ガイド50〜60代女性の友人関係 完全ガイド熟年離婚を考えはじめた50〜60代妻の完全ガイド / ヨバナシ「みんなの夜話


※本コラムは、ヨバナシ編集部が複数の60代女性への取材をもとに、フィクション化した一人称体験談です。プライバシー保護のため、登場人物・年齢・状況に修正を加えています。

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