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相続

相続の制度が変わる時代、60代が今から知っておくべき4つの基本

ヨバナシ編集部 読了 約7分

相続に関する制度は近年、数年ごとに見直しが入っています。生前贈与の扱い、配偶者居住権、預貯金の引き出し、相続登記の義務化。60代の親世代と子世代の両方に関わる、相続の基本ポイントを、税理士の助言を交えて整理しました。1記事10分で読める、相続の入門です。

「相続税の制度って、なんだか毎年変わってるみたい」

去年、近所のお茶会で、65歳の友人がそうつぶやきました。

確かに、相続に関する制度は、近年いくつか大きな見直しが入っています。 生前贈与の扱い、配偶者居住権の創設、預貯金の引き出しの仕組み、相続登記の義務化など、60代の親世代と子世代の両方に関わる変化が続いています。

わたしも、64歳になって、母の終活を手伝うようになってから、相続の制度を改めて勉強し直しました。

この記事では、わたしが税理士さんから教わって「これは知っておいたほうがいい」と思った、相続の基本ポイント4つを、わかりやすくお伝えします。

重要なお願い:この記事の内容は、わたしが税理士さんから2026年5月時点で教わった情報をもとに書いています。相続の制度は今後も変更される可能性が高く、具体的な制度の最新情報、適用時期、ご自分のケースへの当てはめ方は、必ず国税庁の公式情報か、税理士などの専門家にご確認ください。

ポイント① 生前贈与の「持ち戻し期間」が広がった

最初のポイントは、生前贈与の話です。

これまで、亡くなった日からさかのぼって3年以内に行われた生前贈与は、「相続財産に持ち戻して」相続税の計算をする、というルールでした。

2024年以降、この「持ち戻し期間」が、段階的に7年に広がっています。

つまり、亡くなる7年前までさかのぼって、生前贈与した財産が相続税の計算に戻される、ということです。

公的な情報源では、こう説明されています。

令和6年1月1日以後の贈与から、相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により取得した財産があるときには…

国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」

これが、60代の親世代と子世代に、何を意味するか。

子に生前贈与する場合、贈与してから少なくとも7年以上、贈与者が元気で過ごす必要が出てきました。 60代後半から生前贈与を始めても、計算上に組み込まれる可能性が高まります。 70歳前後から贈与を考える場合は、税理士さんに相談して、別の枠組みを併用するのが現実的だと、教えていただきました。

例えば、教育資金の一括贈与の特例、住宅取得資金の贈与の特例、結婚・子育て資金の贈与の特例、それぞれに固有のルールと適用期限があります。これらをうまく組み合わせると、持ち戻しの対象にならない方法があるそうです。

ただし、これらの特例は、適用期間や条件が変更されることが多いので、必ず最新情報を確認してください。

ポイント② 配偶者居住権

2020年に新設された「配偶者居住権」という制度を、ご存じでしょうか。

これは、夫(または妻)が亡くなったあと、残された配偶者が、その家に住み続ける権利を、法律で認められる仕組みです。

何が良いかというと、これまでは「家を相続する」と、家の所有権を全部取ることになり、相続財産の中で家が占める割合が大きいと、配偶者が他の遺産(預貯金など)をほとんどもらえないことがあったのです。

配偶者居住権を使うと、「住む権利」だけを配偶者がもらい、家の「所有権」は子どもがもらう、という分け方ができます。 住む権利は、所有権より評価額が低いので、配偶者は預貯金もしっかり受け取れる、という仕組みです。

これは、特に、家の評価額が高く、預貯金が少ないご家庭に、有効と言われています。

ただし、配偶者居住権は、登記する必要があるなど、いくつかの手続きが必要です。 適用するかどうかは、必ず税理士さんや弁護士さんに相談して決めてください。

ポイント③ 預貯金の「仮払い制度」

3つめは、亡くなった方の預貯金の話です。

これまで、口座の名義人が亡くなると、その口座は凍結されて、相続が確定するまでは1円も引き出せませんでした。

ところが、葬儀代、入院費の精算、生活費など、亡くなった直後に必要な現金は、思いのほか多いものです。

そこで、2019年から、「預貯金の仮払い制度」が始まりました。

これは、相続人がひとりで、ある程度の金額を、葬儀代などの当面の支払いに使えるよう、銀行から仮で引き出せる仕組みです。

引き出せる上限額は、それぞれの口座の3分の1×法定相続分(同一の金融機関ごとに150万円が上限の目安)とされています。

この仕組みを、知っているか知らないかで、亡くなった直後の家族の負担が、大きく変わります。

ただし、仮払いを受けるには、戸籍謄本などの書類が必要で、銀行ごとに必要書類や手続きが少し異なるそうです。 葬儀社の方が、銀行への手続きをアドバイスしてくれることもありますし、まずは銀行の窓口で相談するのが確実です。

ポイント④ 相続登記の義務化(2024年4月から)

4つめは、家や土地の名義変更の話です。

これまで、家を相続したあと、登記(名義変更)をしないまま何年も放置されていることが、よくありました。 放置していても罰則がなかったからです。

ところが、2024年4月から、相続登記が義務化されました。

具体的には、家や土地を相続したことを知った日から3年以内に、相続登記をしなければ、10万円以下の過料が課される可能性がある、というルールです。

これは、相続放棄するケースを除き、家や土地を相続したすべての人に関わります。

過去にすでに相続したけれど登記していない家や土地も、2027年3月までに登記する必要があるとされています。

公的な情報源では、こう案内されています。

相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記をすることが義務付けられました。

法務省「相続登記の申請が義務化されました」

「実家を相続したけど、まだ自分名義に変えていない」という方は、急いだほうがいいかもしれません。

司法書士さんに依頼すると、戸籍集めから登記まで、すべて代行してもらえます。 費用は、地域や状況によりますが、5万円〜15万円ほどが目安と聞きました(あくまでも目安なので、必ず複数の司法書士さんに見積もりを取ってください)。

60代の今、わたしがやっていること

これら4つの制度を知って、わたし自身が、64歳の今、やっていることが3つあります。

ひとつめは、母の財産の「概要」を把握することです。

具体的な金額までは聞き出しにくいので、

  • どの銀行に口座があるか
  • どこの保険会社の保険に入っているか
  • 家と土地の権利証はどこにあるか
  • 印鑑証明書はどこにあるか

これだけを母にメモしてもらいました。

「お母さんが急に倒れたとき、わたしが慌てなくていいように」と話したら、母は素直に書いてくれました。

ふたつめは、自分の家の相続登記が完了しているかの確認です。

実は、わたしの自宅は、5年前に亡くなった父からの相続物件ですが、登記が父の名義のままでした。

去年、司法書士さんに依頼して、無事、わたしと夫の名義に変更しました。 依頼してから完了まで、約2ヶ月、費用は8万円でした。

これで、2027年3月までの相続登記義務化の対象から、わたしは外れました。

みっつめは、エンディングノートを書き始めたことです。

わたし自身の財産、保険、口座、葬儀の希望などを、エンディングノートに少しずつ書いています。

子どもたちが、わたしが亡くなったあとに困らないように、という気持ちと、わたし自身が「もう、いつ何があっても整理されている」という安心感の、両方が得られます。

「相続税が来年から変わる」は、毎年聞く話

最後にひとつ、お伝えしたいことがあります。

「相続税が来年から変わる」というニュースは、ほぼ毎年、どこかで耳にします。

ですが、実際には、税制改正は年末の「税制改正大綱」で議論されて、翌年の通常国会で法律になり、施行されるのは、その後になることが多いです。

ニュースの見出しだけで動くと、振り回されます。

確実なのは、国税庁のウェブサイトの「最新の税制」ページか、税理士さんからの最新情報です。

「税制改正の話を聞いたら、まず国税庁か税理士さんに確認」を、合言葉にしてください。

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さいごに

相続の制度は、ここ数年で、本当にいろいろと変わりました。

ですが、60代の今、4つの基本を押さえておけば、これから何があっても、慌てずに済みます。

  • 生前贈与は、計算上の持ち戻し期間が広がった(7年に)
  • 配偶者居住権で、残された配偶者の暮らしを守れる
  • 預貯金の仮払いで、亡くなった直後の支払いに対応できる
  • 相続登記は、3年以内に必ずする(2024年4月から義務化)

これだけ覚えていれば、いざというときに、次の一歩を間違えません。

そして、自分の家のケースに当てはめるときは、必ず税理士さんか司法書士さんに相談してください。

相続は、自分で全部やろうとせず、専門家の助けを借りるほうが、結果的に時間もお金も節約できる、と税理士さんに言われました。

なお、繰り返しになりますが、この記事は2026年5月時点で税理士さんから教わった情報をもとに書いています。具体的な制度の最新情報、適用時期、ご自分のケースへの当てはめ方は、必ず国税庁の公式情報か、税理士などの専門家にご確認ください。

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