姑・嫁
『おせちは三段重ね』——姑に40年言われ続けた私が、ついに二段にした夜
嫁いで40年、毎年師走に届く姑からの『おせち指導』。今年こそ自分のやり方で——一人の嫁が踏み出した、ささやかな反乱の話。
師走になると、決まって電話が鳴る。
「今年のおせちは、ちゃんと三段重ねにするんでしょうね」
結婚して40年、姑のこの一言で私の年末は始まってきました。一の重、二の重、三の重——それぞれに入れるべきもの、段の順番、色のバランス、すべて細かく決まっている。嫁いだ初めての年末、台所に立たされて朝から夜まで、手が痺れるまで作った覚えがあります。
「手抜き」と言われ続けた三十余年
買ってきた黒豆は、見破られる
一度だけ、スーパーの黒豆を使ったことがあります。忙しくて、どうしても炊く時間がとれなかった。重箱に詰めるとき、これなら大丈夫、と思った。
姑はひと口食べて、箸を置きました。
「あなた、豆のしわの入り方が違うわね」
あの時の沈黙を、いまでも思い出します。
娘にだけは、させたくなかった
娘が結婚するとき、一番に言いました。「おせちは買っていいからね」と。私が背負った重たい荷物を、あの子にまで背負わせたくない。夫は「母さんも年だし、もう簡単でいいんじゃないか」と、ようやく言ってくれました。遅すぎる、と思いながらも、嬉しかった。
今年、私は二段にしました
重箱を二つしか出さなかった朝、手が震えました。姑はもう施設にいて、うちにはきません。それでも長年の習慣が、胸のどこかを刺すんです。
でも、詰め終わった二段を見て、夫がひと言。
「きれいじゃないか。母さんのより、ずっと」
泣けました。情けないのか、嬉しいのか、自分でもわからない涙でした。
秘密会議のみなさんへ
- やめていい習慣は、きっとあります。 誰かに褒められるためのおせちは、もう終わりにしていい。
- 気持ちが揺れたら、ひと呼吸。 長年やってきたことをやめるのは、勇気がいる。揺れて当たりまえ。
- 娘や嫁には、譲らなくていい伝統もある。 愛情は、別のかたちで渡せます。
今夜もどこかで、同じように台所で立ちすくんでいる方がいるでしょう。あなたの「やめる勇気」を、この秘密会議はそっと応援しています。
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